注目の「サ高住」などで、住宅業界初の業務提携

2014年06月28日 20:33

 少子高齢化が社会問題といわれて久しいが、日本では総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が25%を超えており、すでに超高齢化社会といわれる段階に突入している。総務省の予測によると、この割合は今後さらに上昇し、2025年には約30%、60年には約40%にまで達するとみられている。

 長寿は喜ばしいことではあるが、安心して老後を送るためには、高齢者をサポートしてくれる介護サービスや介護施設の充実が求められる。しかしながら、現状としては施設整備率や在宅サービスは決して十分とは言いがたい。

 たとえば、高齢の単身者や夫婦のみの世帯が増加していることに伴って、介護や医療と連携した高齢者支援サービスを提供する「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)の需要が高まっているが、2014年5月末現在の登録件数は15万戸に満たず、国が2025年までの目標に掲げている100万戸には程遠いのが現状だ。

 また、介護サービスを提供する介護職員の人員不足や人材難も深刻な問題だ。厚生労働省によると、団塊の世代が75歳以上になる2025年には約250万人の介護職員が必要と想定されているが、現在の常勤の介護職員数は約150万人。慢性的な人出不足の背景には、処遇の改善・キャリアパスの確立・高い労働災害への対応等、介護事業者が抱える多くの労務課題がある。国もこれらの対策として、補助や税制、融資などによる支援を行っているものの、制度だけでなく、住宅業者などの民間の積極的な力が必要なことは言うまでもない。

 そんな中、パナホーム株式会社と中小企業福祉事業団は、住宅業界では初となる業務提携を6月1日に締結し、「介護事業者サポート」の強化に乗り出したことを発表した。

 パナホームは、これまで10年以上に渡って、全国で1,000ヵ所を超える介護施設建築の実績を持つ住宅メーカーである。一方、中小企業福祉事業団は、全国で3,000名以上の社会保険労務士を抱える団体で、介護事業者の労務問題に取り組んでいる。両者は今回の業務提携により、介護事業者のサポートを強化し、介護施設等へのニーズに対して、建物建設などのハード面と、介護事業者の育成や運営ノウハウなどのソフト面の両面から、エイジング事業における社会的要請に応えていくとしている。

 具体的には、「サービス付き高齢者向け住宅開業支援」「中重度対応型高齢者住宅開設支援」「介護施設の全国の先進事例のご紹介および事業展開支援」「介護施設運営に係る労務管理コンサルティング」「介護事業者の助成金・補助金活用に係る専門的アドバイスおよび申請代行」「介護事業者向け相談会・セミナー開催」の5点で業務提携を行っていくという。

 老後を豊かに過ごすには、金銭的な余裕もさることながら、どこでどのように過ごすかが重要になる。「サービス付き高齢者向け住宅」は、介護度が重かったり、重度の認知症の場合などは対応できないケースもあるものの、生活面での自由度が高く、伸び伸びと暮らせるということで、今後益々、需要が高まることが予想される。今回の業務提携が一つのきっかけになり、業界全体でもっと積極的に取り組まれて、施設の数サービスの充実が図られていくことを期待したいものだ。(編集担当:藤原伊織)