医療事故死調査制度の導入が始まろうとしている。2015年10月からのスタートを目標とし、厚生労働省は医師会や学会と協力しながら、制度構築のための体制作りを進めていく予定だ。医療事故死とは、医療がなされる場所において、診療や治療が行われる中で発生する人身事故死を意味する。医療に当たる側の医師などの過失や医療ミスによる患者の死などが該当する。
医療という専門性や特殊性から、患者に対して病院優位の時代が長く続いていたが、それを打ち破るべく、医療機関に対する安全管理が法律上で義務化され、また、患者側の意思に基づいた治療がなされるようセカンドオピニオン制度を導入するなどして、患者主体の医療実現へ向けて模索が続いている。
しかし、NKSJグループ<8630>の資料によると、医療事故による訴訟件数は、1995年には488件だったのが、2004年で1,110件まで増加している。10年では793件とやや減少したものの、年間800件前後で推移しており、依然として医療事故は高い頻度で起こっていると予想される。
今年2月にも、東京女子医大病院にて、2歳の男の子がプロポフォールを大量投与され死亡するという事故が起こったばかりだ。プロポフォールは子どもを使用禁止対象として、制限されている麻酔薬である。さらに同病院でのプロポフォールの使用実態が調査され、過去にも小児患者63人に投与されていたことが分かった。そのうち投与後に死亡しているのが12人もいることが確認されている。
医療事故死調査制度導入によって、病院側に義務付けられるのは、患者の死亡事故が起こった場合の報告と、第三者機関による院内調査の実施などだ。この新たな制度が導入されることで、医療機関が患者に対してこれまで以上に慎重な対応を心がけるようになり、事故につながりかねない強引な治療方法が改められ、また、本人や家族に対する説明責任も十分になされていくと思われる。しかし、懸念されるのは、義務を怠った場合の罰則規定が設けられていないことだ。病院側が医療事故を隠匿するということがないよう、制度上の不備を補っていく必要があるだろう。(編集担当:久保田雄城)