政府は、医療事故で患者が死亡した際に原因を調査する第三者設立機関を設立することを盛り込んだ「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」を12日、閣議決定した。近く国会に提出し、成立を目指す見通し。
厚労省によれば、国内の医療機関において診療に関連した予期せぬ死亡事故は年間1300~2000件。これらに関し第三者の立場で事故原因を調査する機関はない。今回の改正案では、独立性・中立性・透明性・公正性・専門性を備えた民間第三者機関を新たに設ける考え。
設立に先駆け、東京都を含む12地域でモデル調査行っている一般社団法人「日本医療安全調査機構」によれば、現在、医療事故調査の直接の費用の平均は一件51から90万円とのこと。これらの費用負担はどうなるのか。
厚労省の「第13回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」における「第三者機関の調査に要する費用試算」によれば、遺族の負担割合は未定としながらも、 調査の目的は原因究明及び再発防止であるため、遺族からの申し出により行われる費用については、遺族からも一定の負担を求めることが適当ではないかと論じられている。ただし、費用負担のせいで遺族からの必要な申請が妨げられることがないよう十分に配慮し、低所得者に対しては減免措置を講じる等の対応を考える必要があるとしている。
また、院内調査の実施状況や結果に納得が得られなかった場合や、解剖や死亡時画像診断が院内で実施されなかった場合の費用の負担のあり方については今後検討するとのこと。
58歳女性が、手術後に消毒液を血液凝固阻止剤と取り違えて注入されたために死亡した医療事故「都立広尾病院事件」から15年。公平な第三者機関による事故原因究明は願ってもないことであるが、費用負担の重圧が遺族を苦しめることはあってはならない。遺族の立場を十分考慮した法整備が望まれる。(編集担当:堺不二子)