「唾液の状態から自律神経の乱れがわかる」。花王<4452>のパーソナルヘルスケア研究所・生物科学研究所・解析科学研究所は20日、自律神経機能の乱れにともない、唾液中のタンパク質1479種中で、3種のタンパク質が特異的に減少していることが判明したと発表した。また、これら3種のタンパク質は、おもに抗菌や解毒作用など健康維持に関わるはたらきが知られているものだったという。
さらに、これら3種の唾液中のタンパク質が少ない更年期女性は、無気力で疲れやすい・肩がこる・眼が疲れるなどの“不定愁訴”と呼ばれる身体の不調を自覚している傾向が認められた。
更年期やストレスなどを原因として自律神経機能の乱れが起こり、のぼせ・ほてり・疲労感・イライラなどの“不定愁訴”と呼ばれるさまざまな身体的な不調が現れることが知られている。また花王はこれまでに“不定愁訴”と口腔の不調が関連することを明らかにしてきた。この二つの知見より、唾液腺もほかの臓器と同様に自律神経の支配下にあることから、自律神経機能の乱れにより量や成分などの唾液性状が変化し、口内環境が変化する可能性が考えられるという。
しかし唾液性状、特に成分と、自律神経機能や“不定愁訴”との関連性についてはほとんど調べられていない。そこで今回、自律神経機能の乱れが比較的多いと考えられる更年期女性(45~55歳)50名を対象に、調査研究を行った。
この研究では、検出された1479種の唾液タンパク質成分量と交感神経活動度(LF/HF)との相関分析を行った。その結果、唾液量に関係なくLF/HFと負の相関(交感神経活動の亢進により減少)する唾液タンパク質成分は3成分だった。これらの成分は、おもに抗菌や解毒作用などの健康維持に関わるはたらきが知られている成分である。
そこで交感神経活動度(LF/HF)と相関した唾液タンパク質成分3種と更年期に見られる自覚症状との関連性を解析した結果、「無気力で疲れやすい」「肩がこる」「眼が疲れる」などの自覚症状がある者は、唾液量に関係なく、これらの成分が低いことがわかった。
分析方法は、唾液の遠心上清をフィルター滅菌し、還元・アルキル化・トリプシン消化後、Q-TOF MS によるペプチド情報取得。ペプチド情報からSwissProtデータベースに対する検索を行ない、タンパク質成分を照合・同定。各タンパク質の定量値は、クロマトから得られたemPAI値を用いた。また、15回/分の統制呼吸下、仰臥位状態で携帯型心電計を用いて心電図を記録した。そして、心電図のRR間隔から心拍変動解析(高速フーリエ変換法)を行ない、時間領域解析およびスペクトル解析から自律神経機能を評価した。
更年期症状の評価としては、日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会で作成された、更年期症状評価表(症状21項目)を用いた。下記に示す症状に対し、3段階(強・弱・無)で評価し、強弱を症状有と判定した。(編集担当:慶尾六郎)