東南アジアを中心とする新興各国では、急激な経済発展に伴う電力需要の増加により、発電所の建設が急ピッチで進められている。中でも石炭焚き火力発電所に関する需要は顕著であり、日本企業による竣工や受注がラッシュ状態、これに呼応するように関連事業でも動きが活発化している。
インドでは、横河電機が超臨界圧石炭火力発電所の制御システムを一括受注したと発表。台湾においても、IHI、住友商事、東芝が、台湾のエンジニアリング会社最大手のCTCIと共同で、超々臨界圧石炭火力発電所2基を受注したと発表している。またインドネシアでは、三菱重などが受注し、建設の進められていたインドネシア最大・最高効率の超臨界圧石炭焚き火力発電所が6月に竣工、ベトナムにおいても東芝と双日が共同で石炭火力発電所プロジェクトを受注している。
また、石炭鉱山事業への出資も活発化しており、初めて自らが主体となり炭鉱運営に携わる案件として、住友商事が豪州Aquila社から石炭事業権益を約335億円で取得。三井松島産業も豪州にて、Doyles Creek炭鉱の権益取得を発表している。
その他、三菱重工は、米国のエンジニアリング大手、フルア社と共同で、CO2回収・貯留(CCS)機能を備えた石炭ガス化複合発電(IGCC)設備建設プロジェクトの基本設計(FEED)を受注し、業務を開始したと発表。CCS機能を備えた商業規模のIGCC発電所の建設は世界で初めてで、回収したCO2は肥料の生産と原油増進回収(EOR)に用いる。IGCCは、同社独自技術による酸素吹きガス化炉を採用したもので、発電出力は40万kW。また、肥料生産プラントの生産量は2500トン/日で、総事業費は3000億円を超える規模になる見通しだという。
技術が進歩し、より高効率で発電が出来るようになったとはいえ、再生可能エネルギーやシェールガスなどの新エネルギーに注目が集まる中、石炭に関する動きが活発化しているのには違和感を覚える人も多いのではないだろうか。石炭の全てが発電に使用される訳ではなく、鉄鉱用の原料炭も中国を中心に需要が高いというが、その伸び率は鈍化している。石炭と言えば、化石燃料の代表とも言えるものであろう。この活発な動きが将来どのような影響を及ぼすのか、注視すべき動向ではないだろうか。