重要性増す「原子力規制委員会の独立性」

2012年12月22日 13:04

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原子力規制委員の存在価値と独立性を保ち、二度とあのような悲惨な事故を起こしてはならない。(2012.3.11撮影)

 中立・公正な立場で科学的根拠によってのみ原子力発電の安全性を確認する原子力規制委員会の役割が「すべての原発再稼動について3年以内に結論を出す」とする自民党の政権誕生によって、より大きな存在価値と独立性を示さなければならないこととなった。
 
 野田政権は政治介入を一切しないことにより、原子力規制委員会の中立性と独立性、その役割を担保してきた。少なくとも、安全性を担保する砦として、26日発足する安倍政権も、国民に対し、政治介入は一切しないとの姿勢を約束すべきだ。

 自民党は公約に「原子力は安全第一の原則の下、原子力規制委員会の専門的判断をいかなる事情より優先する」としている。この公約こそ、貫き通してほしい。合わせて、都合の良い人選は避けなければならない。

 原子力規制委員会は発足からこれまでの対応で、国民の期待に応え、科学的根拠によって電力各社の原発敷地内の地層分析を行っている。妥協せず、疑問解明まで時間をかけて委員会としての役割を遂行すべきだろう。

 原発必要派は電力供給や産業界の生産コストの上昇、国際競争力への影響、産業の空洞化や雇用不安などをあげ、早期の再稼動を訴えるが、東京電力福島第一原発の事故が及ぼしている悲惨な状況、チェルノブイリ原発事故の悲惨な状況が今も続いている教訓を踏まえれば、最優先しなければならないものは何かはこどもの目にも分かるだろう。利益追求より、平穏な暮らしの安全を担保することが前提になる。

 原子力規制委員会は原子力エネルギーの推進部局と規制部局を完全分離するために誕生し、環境省の外局として設置された。その経緯を考えれば、原子力規制委員会が何を期待されているかは誰の目にも明らかだ。菅直人元総理は自民党が圧勝すれば、脱原発は明らかに後退すると懸念した。原発再稼動を求める声も大きくなるだろうと。

 偶然なのかどうかは別に、総選挙から2日後の18日、日本経済団体連合会はエネルギー政策の再構築を求めた。「エネルギー政策が経済成長の制約要因になってはならない」とし、「電気事業者のみならず、政府・原子力規制委員会が、原発の安全性や再稼動の必要性等について国民や立地自治体の理解を得られるようしっかりと説明する必要がある」と原子力規制委員会も含めて再稼動の必要性を国民に説明する必要があると求めた。

 野田政権なら「原子力規制委員会は原発の安全性を確認するところ」とこの部分についての認識を改めるよう求めるだろう。

 日本経済団体連合会はもともと、脱原発政策には反対姿勢だった。今回のエネルギー政策の再構築でも「中長期のエネルギー政策について、原子力は安全性の確保を大前提に、引き続きベース電源として活用していくべきである。そのため、新たな原子力規制委員会の下、官民が協力して国民や国際社会の信頼回復を図ることが重要」とした。

 安倍政権がこの要望通りに野田政権の下でエネルギー・環境会議により策定された革新的エネルギー・環境政策を基本部分から塗り替えるとすれば、自民党の立ち位置は旧来の自民党の立ち位置となんら変わっていないとみるべきだろう。

 日本経済団体連合会の政策提言の中に「原子力規制委員会」の前に「新たな」との冠がついているのも、注視すべきだ。

 原発産業界、経済界、政界からの圧力から原子力規制委員会を守り、国民が期待する機能を委員会が果たせるように担保できるか。原発の安全性を判断する科学的根拠のみに拘束される原子力規制委員会の独立性の確保こそ、原子力行政にとって、信頼を勝ち得る唯一の道といえよう。その原点は委員会の人材であり、現行の人材は国民の期待に応えているといえよう。

 藤村修官房長官は「中立、公平な立場で(役割を)果たされていると思う。今後とも調査など役割を果たされていくことを期待している」と21日の会見で評した。多くの国民は思いを共有していることを安倍内閣は心してほしい。(編集担当:森高龍二)