物価上昇・円安で苦しい家計 アベノミクス好景気に実体はあるのか

2014年10月05日 13:37

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4月には8%に上がった消費税。毎日の家計への影響は大きく、少しの買い物にも気を使うようになった方も多いのではないだろうか。政府は、景気の動向を慎重に見極めるとは言いつつも、消費税10%へのさらなる引き上げを2015年の10月に予定している。

 一年の半期区切りとなる10月1日、値上げに踏み切った企業も少なくない。スターバックスコーヒー〈2712〉や「餃子の王将」の王将フードサービス〈9936〉など、大手飲食店が一部メニューの値上げを行った他、三井住友海上火災保険・あいおい損害保険などを経営するMS&ADインシュアランスHLDG〈8725〉や、東京海上HLDG〈8766〉が自動車保険の引き上げを行った。

 今年の4月には消費税が8%に上がり、家計にダメージを与えたばかりだが、その後半年間も物価は上昇している。8月の全国消費者物価指数は3.1%上昇で、以前高水準のままだ。さらには円安による輸入品の価格上昇で、中小企業のコストアップのみならず、家計や消費にも影響が表れつつある。さらに消費税を10%に上げようと言うのだから、多くの人が家計簿の前で頭を抱えているのは想像に難くない。

 政府や報道では、アベノミクスの成果が表れ始め、景気は回復傾向にあると連日繰り返している。確かに、大企業などで数年振りの賃上げ・ベースアップが行われ、景気の上昇を実感している人もいると思うが、それはやはりまだまだ一部に限られるのが現状だろう。日本全体を見ると、物価上昇に賃上げが全く追いついていない状態だ。

 安倍首相はさらなる賃上げ、そして地方や中小企業へもその動きを波及させたいと言っているが、円安によるコストアップなどもあり、中小企業の賃上げは簡単ではないだろう。

 そして問題は円安だけでなく、なぜ大企業が好景気に傾いたかにもある。安倍首相は「デフレ脱却」をスローガンに金融緩和策を進め、日銀から大企業への資金の流れを作った。そうしてアベノミクスを進め、大企業は好景気となった部分が大きい。中小企業まではこうした策はなかなか行き渡らない。

 また、金融緩和策の結果、海外投資家への日本円・株の安売りも起こってしまった。そうした株価変動による好景気は不安定だ。本来、株価や円の変動は、実体経済の好況・不況の結果として現れるものであって、それを金融緩和策でコントロールして「これだけ株価が上がったから好景気」と言うのでは中身が存在しない。日本の株や円を買っている多くは現在海外投資家であって、彼らは値が上がれば容赦なく売り逃げる可能性が高い。あくまで流動的なマネーゲームビジネスとして日本円・株を売買しているに過ぎないのだ。

 そうしてある程度意図的に作られた株価から「好景気」と繰り返し、国民にそう思い込ませたいという部分もあるだろう。何より、安倍首相自身がそう思い込みたいのかもしれない。そう言っている内に実体経済も好景気になる、と思っているのかもしれないが、それは政策ではなく妄想だろう。

 安倍首相は自ら作りだした「アベノミクス」という幻想に囚われ、現実の、家計簿の前で眉間にしわを寄せる国民の顔が見えていないのではないか。安倍首相が気付かないのなら、国民の方が先に気付かなくてはならない。(編集担当:久保田雄城)