安倍政権が打ち出した「地方創生」に関連して、経済産業省は観光客誘致のために地域の名所や特産品の「物語」作成支援を行うとした。対象となる地方には補助金が交付されるが、実態は地方創生を謳った選挙対策ではないのか。
経済産業省は10月21日、安倍政権が推し進める「地方創生」の一環として、地域の名所や特産品などの観光資源に「物語性」を与え、歴史や風情を絡ませて地域観光を売り出す方針を打ち出した。地方の特色や魅力をひとつのストーリーに筋立てアピールすることで、観光客の誘致や経済効果促進を狙う。経産省は有識者を集めて研究会を作り、物語作成の手法や、地域団体や自治体への推進体制を整えていく計画だ。20~30程度の地域を対象に、2015年度予算で補助金を交付するとしている。具体的な支援策は来年1月までにまとめる予定。
しかし安倍政権の「地方創生」には疑問符が付きまとう。急浮上した「物語」補助金の真意は、来年度の統一地方選挙を意識してのばらまきではないのか。費用対効果が不確かなものに先に予算を与えるのでは、結局採算を無視した事業展開しか望めない。人口減で縮小していく地域支援や、東京五輪を控えての観光整備は重要な課題でもあるが、現在の日本の財政が最悪の状態であるということを忘れてはならない。
財務所が9月3日にまとめた15年度予算概算要求の総額は、101兆6,806億円にのぼった。今年度予算の95.9兆円と比較しても大幅に膨らんでおり、過去最大となる。その大きな要因は、地域対策予算としての特別枠だ。「新しい日本のための優先課題推進枠」には3兆8,758億円もの額が組まれている。特に公共事業を行う国土交通省は「道路ネットワークによる地域・拠点間の連携確保」と謳い、特別枠に1兆4,626億円を計上。要求総額は特別枠全体の4割にも及んだ。
高齢化により医療費や介護費が増大する中、社会保障費の確保が重い問題としてのしかかっている。節約できるところは歳出削減に取り組んでいかなければならないというのに、政府にその考えはないようだ。地方創生を隠れ蓑にやみくもにばら撒かれる補助金は、国民の税金から成っていることを忘れてはならない。地域活性化のためには、本当に必要なことを見極め、重点的に対策を立てていく必要があるだろう。(編集担当:久保田雄城)