11月15日より、3年振りに液晶テレビ「AQUOS(アクオス)」のテレビCMも復活。以前のバージョンと同じく女優の吉永小百合さんをメインに、トランポリン選手の上山容弘さん、フィギュアスケート選手の本田真凛さんを起用し、4Kテレビの魅力を伝える。
シャープ<6753>は、新型の独自液晶技術「IGZO(イグゾー)」を使った、4K(フルハイビジョンの4倍の解像度を持つ高精細映像)スマートフォン向け液晶パネルを開発したと発表した。テレビではすでに4K対応の機種は発売されているが、スマートフォンではまだ実現されていない。シャープは2016年度にも、IGZO技術を使った4Kスマートフォンの量産を目指すとしている。
現在のスマートフォン液晶パネルは、表示画素数1280×720ドットのHD解像度が一般的だ。IGZO技術はこの画素密度を2倍、画素サイズを4分の1にすることで、表示画素数2560×1600ドットを実現している。そうした高解像度技術は、今まで低温ポリシリコン液晶技術が主流だったが、IGZO技術の特徴はそれに比べ生産コストが安いことと、省電力が可能なことが挙げられる。シャープは低コストで省電力のIGZO技術、コストは高いがデザイン性などに優れた低温ポリシリコン技術の両方の生産ラインを用意し、ニーズに合わせた様々な高精細スマートフォンを売り出していきたいと発表した。
シャープは今年6月には円形、楕円形など自由な形で液晶画面を作れる「フリーフォームディスプレイ」も発表している。こうした技術も含め、より高精細で自由度の高い液晶商品開発に力を入れていくようだ。
さらに、年末商戦に向け4Kテレビの購買意欲増加を狙い、3年振りに液晶テレビ「AQUOS(アクオス)」のテレビCMも復活させる。韓国メーカーなどとの争いも激化し、苦戦を強いられてきたシャープだが、テレビ事業も収益改善の動きを見せている。しかし、4Kテレビはまだ消費者からそれほど期待を集めていない現状もある。地デジ化でテレビを買い替えさせられて以降、「3Dだ、4Kだ」と騒がれても、テレビ買い替えに対し、消費者の財布の紐はなかなか緩まない。個人消費が冷え込んでいる昨今ではなおさらだろう。
逆に、スマートフォンの高精細化や、より自由度の高いデザイン・機能の追加には消費者も興味をそそられる可能性が高い。国内外の他企業よりいち早く新技術を発表したシャープも、そこに大きな可能性を見出しているのだろう。
13年3月期に5453億円もの純損失を出し、そこから1年半に渡り、経営再建に向け奔走してきた。その再建の中心となってきたのはやはり液晶技術だ。復権に向け動き出したシャープの動向を見守りたい。(編集担当:久保田雄城)