マツダが、10月から「マツダ デミオ」をベースに自社開発した電気自動車「デミオEV」のリース販売を開始すると発表。さらに日産が、電気自動車「日産リーフ」とニチコンが開発した「EVパワーステーション」とをセットで合計250台、2012年度まで無償提供すると発表するなど、電気自動車の普及に向けてその有用性をアピールする取り組みが拡大している。この取り組みと並行するように全国各地で進められているのが、電気自動車の普及には必要不可欠な充電設備の設置である。
5月には、ココストア・サークルKサンクス・セブンイレブンジャパン・デイリーヤマザキ・ファミリーマート・ミニストップ・ローソン・中電オートリース・中部電力の9社が、コンビニエンスストアに電気自動車用急速充電器を設置することにつき合意したと発表。9社は、愛知県内の21箇所のコンビニエンスストアの店舗駐車場に急速充電器を各1基設置し、今秋以降の利用開始を予定しているという。今回は愛知県でのみの実施ということであるが、コンビニエンスストは全国各地に存在し、24時間営業していることが一般的である。その為、急速充電設備導入モデルとして広がれば、電気自動車ユーザーの利便性が大きく向上するものとなるであろう。
また、JFEエンジニアリングとコスモ石油は、コスモ石油のガソリンスタンドにJFEエンジニアリングが開発した電気自動車用の蓄電池搭載型急速充電器「RAPIDAS」(ラピダス)と太陽光発電設備を設置し、EV時代に対応するガソリンスタンドの実証事業の実施を発表。ラピダスに内蔵した蓄電池に太陽光発電設備で発電した電力と夜間の商用電力を蓄え、電気自動車への充電サービスとGSへの給電を行うもので、同時に、災害時など停電の際に給油機能を維持するための実証も行われるという。従来給油を担ってきたガソリンスタンドをそのまま利用できるとなれば、これもユーザーにとって非常に有益なものと言えるであろう。
電気自動車普及にとって大きな壁の一つとなっていた、充電設備の充実が急ピッチで進められている。一度の充電による航行距離が200kmと短いことが、その設置を急ぐ理由であろう。しかし、普通充電で8時間、急速充電でもバッテリー残量警告灯点灯から80%充電までに約30分かかるなど、設置個所が増えるだけでは、従来のガソリン車のようなストレスのないカーライフは望めない。こうした中、トヨタは、水素と酸素を化学反応させて電気をつくる燃料電池を動力源とする燃料自動車の開発を進めており、2015年までに、水素インフラが整備される見込みの大都市周辺で燃料電池ハイブリッド車を一般向けに販売する計画であるという。すでに一回の水素充填の航行距離は約830kmとなっており、電気自動車の比ではない。電気自動車のためのインフラが整った頃には、すでに電気自動車は過去のものとなり、燃料電池車への需要が高まっている。そんな事態に陥る可能性もあるのではないだろうか。