サントリー先日発表したウイスキーの値上げに疑問符が……付かないか?
値上げの内容は「山崎」など国産ウイスキーと「ザ・マッカラン」などの輸入スコッチウイスキーの合計6ブランド39品目を最大25%値上げするというものだ。2015年4月から新価格を適用する。「角瓶」などの普及品や他の輸入ウイスキーの価格は据え置く。
今回、値上げするのは国産で「山崎」「響」「白州」、スコッチウイスキーで「ザ・マッカラン」「バルヴェニー」「ラフロイグ」の3ブランド。サントリーは他にも多くのスコッチを販売しているが、今回は3ブランドだけの値上げだという。ウイスキー・ブームを背景に巷で人気の銘柄ばかりだ。
主だった製品別に見ると「響17年(700ml)」は税別希望小売価格1万円を1万2000円に引き上げる。同じく「山崎12年(700ml)」は、7000円から8500円に、ベーシックな製品「山崎」は3500円を4200円に改訂する。輸入スコッチではモルトウイスキー「ザ・マッカラン12年(700ml)」は5000円を6000円に値上げする。高級国産品の値上げは2008年9月以来6年半ぶり、輸入スコッチも2013年3月以来2年ぶりの値上げとなる。
この値上げの理由をサントリーは、「麦芽やトウモロコシの輸入価格が2009年比で60~70%上昇しているほか、世界的な需要の高まりで熟成樽に使うオーク(樫)材も高騰している。さらに円安によって、輸入ウイスキーの輸入価格も上昇している」と説明する。
しかしながら、財務省貿易統計で輸入麦芽のCIF価格を見ると、2010年比2014年1月時点で、麦芽価格は25%ほどアップしている。トウモロコシも15%ほど上がった。CIF価格というのは、輸入のための船賃、保険料等を含んだ日本の港に着いた際の価格だ。それに加えて、秋以降の大幅な円安傾向がサントリーの説明する「麦芽やトウモロコシ輸入価格の60~70%上昇」となるのかも知れない。
そこで疑問、マッカランやラフロイグは英国からの輸入商品で、ボトリングもスコットランドで行なっているはず。だから、「円安の影響で日本国内価格を上げる」というのは分かる。分かりやすい論理だ。
しかしだ、問題は国産ウイスキーだ。サントリーも今や自社で“モルティング(二条大麦を製麦して麦芽、すなわち“モルト”に加工する作業)”などは行なっておらず、スコットランドのモルトスター(麦を“モルト”に加工する企業)から麦芽を購入している。その値上がり価格を最終製品に反映するのは普通の消費財生産企業なら理解できる。
ここで、再度「しかし」だ。ウイスキーが最終製品になるには、国産の場合規則はないが、概ね「6年以上の熟成が必要」とされる。つまり、サントリーが来年販売するウイスキーの原料である麦芽は6年以上前に輸入したものだ。ましてや、「山崎」「白州」「響」などの高級ブランドは10年以上、場合によって30年の熟成原酒を使っている。ここまで記すとお分かりだろう。国産ウイスキー値上げの“疑問”だ。実は10年以上前に仕入れた麦芽で仕込んだウイスキーの製品価格を25%値上げするサントリーの手法。これはウイスキー・ブームと円安を逆手に取った利益獲得策としか思えない。
麦芽やコーンなどの価格上昇を理由に国産ウイスキーの製品価格を上げるなら、今季蒸溜した原酒を熟成したあとの6年後、2020年に普及版「角瓶」や「ホワイト」などからの値上げが妥当と思える。(編集担当:吉田恒)