「マッサン」効果でニッカウヰスキーが絶好調。その裏にはアサヒグループの周到な準備があった

2014年12月02日 19:16

Nikka Whisky1

アサヒグループのニッカウヰスキーは、1956年にリリースした初号「ブラックニッカ」と東京オリンピックの1964年に発売した「ハイニッカ」の復刻ボトルをリリースする

 アサヒグループホールディングス(HD)のニッカウヰスキーが取り扱う国産ウイスキーの業績が絶好調だ。2014年1~11月期累計販売で前年比118.0%を達成。なかでも、ニッカ創業者である竹鶴政孝とその妻リタの物語とされるNHKの連続テレビ小説「マッサン」の放送開始後は、急激な伸びを示す。

 アサヒグループHDが12月2日に発表した数字によると、実に9月の国産ウイスキー売上前年比は122.0%、10月同137%、11月同179.0%と急伸している。9月~11月の3カ月だけで前年比146.0%も増加した。「9月以降はボトリングなどのパッケージング行程が間に合わない状況で出荷調整せざるを得ない」と嬉しい悲鳴を上げている。ニッカウヰスキーの生産現場は年末まで“休日出勤”が常態化しているという。

 これには、先に述べた「マッサン」効果がもちろん貢献しているのだが、この特需を予測したアサヒグループのマーケティング戦略の奏功しているようだ。アサヒの営業グループは、この春から7000名体制で営業「オールアサヒ洋酒拡販作戦」を実施して全国の量販店を掘り起こしてきた。11月現在、国内の大型量販店(GMS)としてはほぼMAXといえる1万4000店で「マッサンとリタの物語」ポスター掲示とニッカ商品集中展示・拡大を図った。同時に、全国7万7000店の料飲店でもニッカ製品を露出、大きな伸びにつなげた。

 この結果、同グループの主力商品スーパードライに頼ってきた売上構成が変化しつつあるという。これまでの「ビール主体の夏場依存型」売上が、ビール、洋酒、ワインなどの売上がバランスして、これまで秋になると大きく落ち込んでいた販売が、夏場の販売を維持する方向に変化しているというのだ。

 この好調な販売を維持成長させるために、ニッカウヰスキーは年明け以降に数量限定新商品を投入する。まず、2015年1月27日に1956年にリリースした初号「ブラックニッカ」を復刻して発売。続く2月24には東京オリンピックの1964年に初号を発売した「ハイニッカ」の復刻ボトルをリリースする。また、第三弾として3月以降にも限定ボトルを、また4月以降も積極的に新商品をリリースすると発表した。が、商品の詳細は追って説明会を開いて公開するという。

 今回発表した限定ボトルは、発売当時のボトルを市場で検索捜索・発掘してニッカのブレンダーが実際にテイスティング、当時の香味などを再現したもの。ボトルデザインも発売当時のデザインに限りなく近づけ、レトロな意匠ながら洗練されたボトルとした。

「ブラックニッカ復刻版」はアルコール度数43%、想定小売価格は1700円/1本720ml。「ハイニッカ復刻版」はルコール度数39%、想定小売価格は1400円/1本720ml。それぞれ1万ケースの数量限定品だ。

 ニッカのチーフブレンダー佐久間正氏によるテイスティングコメントは、ブラックニッカを「カカオの甘い香りと穏やかなピート香、トーストした麦とチョコレートの入ったクロワッサンの味わい」、ハイニッカを「軽快で甘くコクのあるモルトの香り、モルトとグレーンが調和したバニラやハチミツを思わせる味わい」だという。筆者はもっと単純に、ブラックニッカは「パンチのある余市モルトを思わせるウイスキーらしい味わい」、ハイニッカは「軽くカジュアルな味わい」としておく。

 実は、今回の会見で発表された“もうひとつの商材”があるのだが、この件は項を改めて報告する。(編集担当:吉田恒