全国知事会議で、国と地方が総力を挙げて少子化対策に取り組む必要があるとした非常事態が宣言された。人口動態調査によれば、出生数は、1973年以降、漸減もしくは横ばいが続いており、このペースで行くと2020年前後にも、年間出生数が100万人を切ることになる。
昨年7月15日に佐賀県唐津市で行われた全国知事会議で、国と地方が総力を挙げて少子化対策に取り組む必要があるとした非常事態が宣言された。厚生労働省の人口動態調査によれば、出生数は、1973年以降、漸減もしくは横ばいが続いており、このペースで行くと2020年前後にも、年間出生数が100万人を切ることになる。
政治家の少子化対策に関する失言が相次いでいることからも、政府が少子化対策に焦っていることがうかがわれる。6月に行われた愛知県新城市議会で長田共永市議が「婚姻届をいただいた方に穴のあいたコンドームを配ったらどうか」という旨の発言をし、議長から注意された。さらに、12月10日には、麻生太郎氏が「高齢者が悪いようなイメージを作っている人がいっぱいいるけど、子供を産まないのが問題」と発言して物議をかもした。
上記発言が「失言」として問題になった理由として、政治家が「国民の生活状況や環境に関係なく、子供を産まないことは、国民として義務を果たしていない」と考えているように見えることが挙げられる。つまり、子供を産むことが国家にとって大切であることを強調するだけでは、国民の反発を受けるだけで少子化対策にはつながらない。
効果的な少子化対策は、国民が強制されるのではなく、自発的に子供を産みたいと考える環境、状況を整えることにある。08年の厚生労働省委託調査によれば、女性の「子を持つ直前の就労形態別離職理由」のうち「1人目の子の妊娠中の退職」が48.3%、「子を産むための妊娠前の退職」が19.4%に及び、子供を妊娠するため、もしくは子供を妊娠するために仕事を退職する女性が、多いことが明らかである。
同調査によれば、正社員で雇用されている男女について、男女ともに希望としては「仕事と子育てを両立」させたいと希望しているが、現実は「仕事優先」の割合が高くなっている。つまり、日本社会は、多くの男女にとって「仕事と子育てを両立」させながら子供を持つには正社員で働くこと難しい社会なのだ。そのため、日本社会では、仕事と子育てを両立し、必要十分な子育てをするために、夫婦のうちどちらかが正社員であることを諦める必要性がある場合が多い。
子供を産んで育てるには相当の費用がかかるにも関わらず、夫婦が共に正社員で働くことが難しい社会では、子供を産むことにためらいが生じるのは仕方ない。少なくとも国民の多くが「仕事と子育てを両立」できる環境、状況を早急に整える必要がある。(編集担当:久保田雄城)