航空国内3位のスカイマークが、経営危機脱却に向け、同業界のツートップであるJAL(日本航空)、ANA(全日本空輸)両社との共同運航を行う見通しとなった。共同運航は今年3月下旬から5年間が予定されている。
国内航空会社3位のスカイマーク〈9204〉が、経営危機脱却に向け、ツートップであるJAL(日本航空)〈9201〉、ANA(全日本空輸)〈9202〉両社との共同運航を行う見通しとなった。共同運航は、羽田空港を発着するANAの全5路線、JALは運航のない神戸線を除く4路線で調整が進んでいる。スカイマークをめぐり、異例の3社共同運航に至るまでの流れをまとめてみた。
スカイマーク経営危機の発端となったのが、2014年のエアバスA330-300型機の導入だ。エアバスは「グリーンシート」と名付けられたプレミアムシートのみを搭載し、普通席と同価格で提供。LCC(ローコストキャリア)の台頭で価格競争に陥る航空業界に、低価格かつ高品質を持ち込もうという狙いだった。同時に発表されたミニスカートの制服も大きくメディアに取り上げられたため、記憶に残っている方も多いだろう。
しかし、このエアバス導入策は利用客に受け入れられなかった。A330機の提供座席数増加に対し搭乗者増加率が追い付かず、12月にはスカイマーク全路線平均搭乗率は過去5年で最も低い54.5%となってしまった。同時に昨年は、エアバスA380型機6機をキャンセルした問題で、製造元の欧州エアバスに違約金200億円を求められる事態も発生した。こうした経緯が重なり、スカイマークの経営は一気に傾いてしまった。
経営悪化を受け、スカイマークはまず、11月にJALとの共同運航を目指し提携協議を開始した。しかし、この動きに対し国土交通省が、JAL単独の支援ではなくANAとの共同運航も協議するよう指導を行った。これは、公的資金を受け経営再建中のJALが、スカイマークとの提携によって路線増加することは、市場の競争原理において不当となる可能性があるとの考えから行われたものだ。現自公政権は、民主党政権時代に莫大な公的資金で再建を行ったJALよりも、ANAとのつながりが強く、次期政府専用機整備もANAに依頼している。そういった政府側の思惑もあったものと思われる。
国交省からの指導もあり、スカイマークはANAとも交渉を開始。この時ANAから出資を受ける話も出たが、これは条件面で折り合わず共同運航のみという形に落ち着いた。出資を受け入れれば事実上ANA傘下に入ることとなるため、再建は目指しつつも経営の主導権を他社に奪われないようスカイマークがしたたかに動いたと言えるだろう。
こうした流れを経て、今年3月下旬からスカイマークとJAL、ANA両社との3社共同運航が行われる形となった。拮抗するトップ争いの中でスカイマークの路線を取り込み、先手を取りたいJAL、ANA両社。JALに目を配りつつ、ANAに比重を置き国内航空業界のバランスを保ちたい政権。そして、そうした中で経営再建への最善策を探るスカイマーク。それぞれの思惑が交錯する中、共同運航は今後5年間が予定されている。(編集担当:久保田雄城)