ヤマハ発が新中期経営計画を発表 目指す姿は2017年度売上高2兆円

2013年01月03日 13:50

ヤマハ中期

ヤマハ発動機は12月18日、2013年から3年間の「新中期経営計画」を発表した

ヤマハ発動機<7272>は12月18日、2013年から3年間の「新中期経営計画」を発表した。計画最終年の2015年度に連結売上高1兆6000億円、連結営業利益800億円を達成するというのが数値目標で、2012年度の業績見通しと比べると連結売上高で4000億円(33.3%増)、連結営業利益で520億円(185.7%増)上乗せする。3年間でニューモデルを約250投入して全製品販売台数を670万台から900万台へ34.3%伸ばし、同時期に900億円のコストダウンを達成して、連結営業利益率を2.3%から5.0%に、ROEを5.9%から10%に、ROAを1.9%から4%に引き上げる。

 5年後の2017年度の「目指す姿」もあわせて発表しており、全製品販売台数1200万台、連結売上高2兆円、連結営業利益1500億円、連結営業利益率7.5%、ROE15%、ROA5%という青写真を描いている。実現すれば過去最高の営業利益1269億円(2007年度)を上回り、リーマンショック以来の業績低迷を完全に払拭できる。その5年間のコストダウンの総額は1500億円と見積もっている。3年後、5年後どちらの数値目標も、想定為替レートは円ドル80円、ユーロ円105円。現状はそれよりも円安が進行している。

 攻略ポイントを焦点化したモノづくりで、商品性向上とコストダウンを両立

 新中期経営戦略の骨子は、「事業規模の拡大」と「収益力向上」の2つ。事業規模拡大での主な活動は「攻略ポイントを明確にした「勝てる製品」を現中期比で2倍投入する」「新事業にも挑戦し二輪車・マリンに次ぐ基幹事業を育成する」「ヤマハブランドの認知・好感度の向上の取り組みを徹底する」の3点だ。収益力向上では、コストダウン、構造改革、グローバル化により、効率性、製品の稼ぐ力、為替・その他のリスク耐性を向上させる。

 事業規模拡大での主要事業である二輪車の戦略は、次の通り。世界の成長センターとして最も重視するインドでは大きく成長を続ける市場と位置づけ南部の二輪車工場を新設し、マス領域であるスクーター、125ccクラスの生産を強化する。スクーター需要層として新たに女性をターゲットとし、全員女性の生産ライン、女性専用のトイレの設置を販売店に義務付けるなど徹底的に女性にこだわった生産・マーケティングを展開し、需要を取り込む。2012年度の販売見込み40万台を2017年度には220万台を狙う。アセアン市場は安定的成長へ向かう市場と想定し、顧客ニーズの多様化に対応する。低燃費や実用性といった基本性能を重視する移動手段としての商品としてだけでなく、ファッション性、スポーツ性のある商品ラインナップを増やす。販売面でも従来の商品訴求・販路政策・プロモーションの進め方を全て見直し、ブランド力の向上に全力を挙げ、2017年度に600万台の販売を目指す。先進国では、『潜在需要固く、回復に向かう市場で生涯顧客を増やす』がテーマ。エントリーからフラッグシップモデルまでのラインナップを拡充。エントリーユーザーをベテランライダーへと育てていく、ライフタイムマーケティングとの相乗効果で、「ヤマハの世界づくり」を進める。

 現中期経営計画では採算性の改善を優先して新商品が年間40モデル前後に抑えられ、売上高、利益が計画未達の一因になっていた。新中期経営計画では2013年65モデル、2014年90モデル、2015年100モデルと新商品を積極的に投入し、攻めの姿勢に転じる。投入モデルを増やすだけでは競合には勝てない。二輪車を例にすれば、新興国で最も求められる性能は燃費性能だが、それを押さえた上で、現地の消費者が望むデザイン、機能を盛り込んだ「攻略ポイントを焦点化・差別化した」製品を投入していく。そのために、エンジン・フレームなどの基本プラットフォームを本社で開発し、シート、外装デザイン、カラーリングなど現地のニーズや好みを取り入れた機能を現地の開発拠点でおこなう。これは製品の魅力度向上と共に、開発リードタイムの30%短縮や鮮度を求める市場要求への対応をも可能にする。

 コストダウンについてはグローバル調達・供給を進めていく。コストダウン、商品力強化の中核となるのはプラットフォーム部品。そのプラットフォーム部品を「グローバルパートナー」と呼ぶ取引先に調達を集約。品質とコストを両立した部品を調達し、現地で製品化する。更に調達した部品や製品を域内の融通だけに留まらず域外の欧米にも拡大し、コストメリットを最大化する。

 財務戦略は、財務体質の改善を優先して設備投資を償却費の範囲内にとどめていた現中期経営計画で「B/Sを立て直し財務の安定感は出てきた」(柳社長)として、新中計では投資資金枠を、借入金の返済、株主還元とバランスしながら「償却費+当期利益の2分の1」まで拡大し、積極的な成長投資を目指す。社内的にはROAで投資効率も精査しつつ、現中計の約5割増となる1900億円規模の投資を計画する。(編集担当:寺尾淳)