安倍内閣の経済政策「アベノミクス」がベールを脱ぎ、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」を日本経済再生の「三本の矢」と位置付け、11日にとりまとめる緊急経済対策に20兆円規模、15日に閣議決定する補正予算に12兆円程度、公共投資に5兆円程度を投じる計画が明らかになった。国債増発も5兆円以上。とは言っても「噂で買われ、事実で売られる」のが株式市場で、すでに織り込み済み。
朝方の為替レートがドル円87円台半ば、ユーロ円114円台半ばで円が強含んだことと、前日のNYダウが50ドル安で「日米連動」も少しは復活した模様で8日の東京市場は安く始まり、日経平均始値は54.80円安の10544.21円。前場は時々プラス圏にタッチしながらおおむね10500円台の狭いレンジで推移したが、後場は10463円まで下落する局面もあった。それでも終値が90.95円安の10508.06円まで戻したのは、11日のマイナーSQでのSQ値10500円を意識した動きか。売買代金は1兆8725億円で前日より多かったが、値下がり銘柄が値上がり銘柄の約1.8倍あり、全般的に売り先行の日だった。
値上がり業種では私鉄が好調で、東証1部で下げたのは1円安の相鉄HD<9003>と新京成<9014>の2銘柄のみ。食品のカルビー<2229>、東洋水産<2875>、小売のファミリーマート<8028>といったディフェンシブ系は強かった。値下がり業種の上位は不動産と証券で、特に不動産大手は三井不動産<8801>が78円安、三菱地所<8802>が94円安、住友不動産<8830>が154円安と売り浴びせられた。野村HD<8604>>も15円安で続落している。
ファーストリテイリング<9983>は続伸。ソフトバンク<9984>は買われたが、ファナック<6954>は下げた。メガバンクの三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>、三井住友FG<8316>は揃って続落。輸出関連株のトヨタ<7203>、ホンダ<7267>、コマツ<6301>、キヤノン<7751>も下落した。8日からラスベガスで始まる家電見本市CESで「4Kアクオス」をお披露目するシャープ<6753>は11円高だったが、同じ4Kテレビ関連銘柄のパナソニック<6752>、ソニー<6758>、東芝<6502>は下げた。
オリコ<8585>とアイフル<8515>は今日も売買代金1位と2位。大きく上げて下げた前日と違って株価は上昇し、41円高のオリコは値上がり率4位、60円高のアイフルは9位。この2銘柄は当分、活発な商いが続きそうだ。ランキング上位で存在感を示したのが海洋土木に強い中堅ゼネコンで、震災復興関連でも国土強靱化関連でもある不動テトラ<1813>。19円高で値上がり率6位、売買高3位、売買代金7位に入った。他にも公共投資関連の中小型株はひろく買われている。
今日の主役は売買高1176万株と商いが活発だったジャスダックの楽天<4755>。「楽天市場」がアマゾンの送料無料&低価格の攻勢を受け、電子書籍端末「コボタッチ」の不具合や不人気もあって株価がずっと低迷していたが、前日に49円高で3ヵ月ぶりの高値をつけたのに続き36円高と続伸した。きっかけは7日にライバルのアマゾンが一部の低価格商品に2500円以上のまとめ買いをしないと購入不可のルールを設けたことで、ネット上では「アマゾンの送料無料崩壊」と騒がれている。昨年11月からファッション関連のネット通販モール「ゾゾタウン」を完全送料無料にしたスタートトゥデイ<3092>がこの日、12月の商品取扱高の伸び率を10.9%と発表し、「送料を無料にしてもこの程度か」と受け止められて株価が東証1部値下がり率2位の大幅下落を喫したのは何とも皮肉な話。送料をめぐる自分のネット上の発言が騒ぎを引き起こし、そのお詫びで送料を無料にした前澤友作社長は今、どんな心境だろう。(編集担当:寺尾淳)