ビール酒造組合によると、平成24年1月から11月までの合計出荷量が100.1%と横ばいで推移しているビール市場。こうした中、主力の「アサヒスーパードライ」はブランド合計で前年比100.3%と辛うじて前年実績を上回ったものの、ビール類トータル販売数量は前年比98.3%と前年を下回ったアサヒビール が2013年の事業方針を発表した。
「価値で選択される企業」を目指すという同社は、最大の強みであるビール類については、ビールの主力「アサヒスーパードライ」、新ジャンルの主力「クリアアサヒ」、糖質ゼロ発泡酒「アサヒスタイルフリー」の基幹ブランドの強化に注力。また、昨年2月に発売しビールテイスト清涼飲料の「アサヒドライゼロ」についても引き続き育成を図るという。
具体的には、「アサヒスーパードライ」では「省コストかつ省スペース」を実現した新しい「エクストラコールド」専用ディスペンサー「新ディスペンサーシステム(空冷タイプ)」の本格導入を開始し、取扱店数トータルで5000店を目標に取り組み、また、昨年発売した「スーパードライ」初のエクステンション商品「アサヒスーパードライ-ドライブラック-」をクオリティアップし、新規飲用層の獲得とビール市場での浸透・定着を図って前年実績突破を目指す。「新ジャンル」については、2012年の市場の伸びは鈍化傾向を示していた。そこで、ブランド初のエクステンション商品「クリアアサヒ プライムリッチ」を発売してブランド力の底上げに注力。また、健康志向の高まりを背景に好調な推移を続ける「プリン体オフ、糖質オフ」の「アサヒオフ」といった、健康に配慮した既存ブランドについても引き続き強化する。その他、今年3月開催の「WORLD BASEBALL CLASSIC」にあわせた新商品や「WBC日本代表応援」デザイン缶商品の発売など、WBC応援施策の展開で販売増を図るという。
酒類業界にとって2013年は、消費税増税を翌年に控え、耐久消費財への消費流出や景気の停滞・減速による消費マインドの低下、節約志向などにより厳しい状況が続くと予測される。「ビールテイスト清涼飲料(アルコール度数0.00%)」の台頭もこの傾向を推し進めるものとなるであろう。一方でキリンホールディングス のデータによると、世界でのビール総消費量は前年比3.8%増の約1億8878万klで、26年連続増加している。特にアジアは前年比8.4%増、アフリカも同6.9%増と新興国での増加が顕著となっている。WBC応援施策は展開すると言うものの、こうした諸外国での施策が今回の発表では見られなかった。現在は横ばいで推移しているものの将来的には国内市場の縮小が確実視されるだけに、海外市場に対する事業方針は最も関心の高い事項の一つであろう。その為、少し物足りない発表だったのではないだろうか。(編集担当:井畑学)