「節電ブーム」終焉後のワーク・ライフ・バランス

2013年01月09日 10:08

テレワーク、在宅勤務、サマータイム制。一昨年の夏、震災をきっかけに、多くの企業が従業員の働き方を見直す取り組みをおこなった。当初は震災の影響で出社困難となった従業員が在宅勤務などを実施した企業 が目立ったが、その後は大手企業を中心としてさまざまな業務の見直しが行われた。

 営業部門の社員が取引先に「直行・直帰」する制度を導入したリコージャパン や、在宅勤務、夏期休暇の一斉取得などを実施したKDDI 。大きく報道されないまでも、クールビズの前倒し、土日勤務等は多くの企業で行われたことだろう。

 5月の背広や、出社して30分で取引先へ出かける風習は非効率的だ。誰もが考えていたことが、節電という大義名分を得て初めて実現したというべきか。

 節電と同時にワーク・ライフ・バランスへの取り組みも進んだ。在宅勤務によって子どもと過ごす時間が増えたという人も多いことだろう。節電という名の経費削減と、震災後の「絆」や「つながり」ムードの高まり。この2つが結びつき、ワーク・ライフ・バランスが意識されるようになったのかもしれない。リーマン・ショック後に高まった企業のコストカット意識が、震災によってワーク・ライフ・バランス色をより強めたともいえる。
 
 しかしこの節電とワーク・ライフ・バランス、昨年夏にはすでにブームが過ぎてしまったかのようだ。クールビズやエアコンの設定温度引き上げは相変わらず行われているが、在宅勤務などは一部の大手を除き、日本企業には定着しなかった。冬の節電時には、ワーク・ライフ・バランスは話題にも上らない。土日勤務やサマータイムは話題性こそあれ、子育て世代からは「子どもの預け先に困る」など問題点も多かったという。

 個々の企業がいくら魅力的な制度を導入しても、地域の保育事情や他社の足並みが揃わなければ効果は薄い。全員が同じ時刻に出社し、皆でサービス残業という従来のスタイルを変えなければ、「節電」という大義名分なき後のワーク・ライフ・バランス実現は難しいだろう。