マイナーSQ日は円安を背景に3ケタの上昇

2013年01月11日 20:05

 NYダウは80ドル高で続伸。11日朝方の為替レートは、ドル円が89円台に、ユーロ円が2円以上動いて118円台に乗せた。ECB(欧州中央銀行)が利下げを見送って納得のユーロ大幅高に、「雇用拡大にも責任を持て」と政府のプレッシャーを受ける日銀の追加金融緩和を先取りした円安が加わった。さらに午前8時50分に発表された日本の11月の貿易収支は8475億円の赤字で、経常収支は市場予測を大きく下回る2224億円の赤字。サプライズだが、日本経済にはネガティブでも、円安がさらに進行したので株式市場にはポジティブになる。

 11日はマイナーSQ算出日で、オプションの刻み値10750円を意識したSQ値がつきそうな滑り出しが予想された。その日経平均始値は133.50円高の10786.14円で、7日の取引時間中の昨年来高値を更新して東証アローズ内では拍手が起こった。すぐに日経平均は10800円台、TOPIXは900台に乗せ、SQ推計値は10771.98円がついて市場の期待通り10750円を上回った。

 政府の緊急経済対策が発表されたが、ほとんどは事前に小出しにされた内容で織り込み済み。その後は上昇が一服して上値が重くなり、日経平均は10700円台に戻り、一時はSQ値も割り込んだ。「利益確定売りの金曜日」に「三連休前」という要素が加わり下げやすい環境がある上に、為替がドル円88円台、ユーロ円117円台に戻ったのが影響した。しかし大引けには為替は朝の水準に戻り、日経平均は148.93円高の10801.57円と終値でも昨年来高値を更新して、3日続伸で今週の取引を終えている。売買代金が2兆円を上回るSQの日らしい大商いになった。

 東証33業種では鉱業、その他製品、保険業、医薬品、石油・石炭製品が値上がり業種上位で、繊維製品、金属製品、証券・商品先物取引業、その他金融業、建設業の5業種が値下がり業種だった。

 前日の中国の12月の貿易収支改善を受けて中国関連銘柄のコマツ<6301>は36円高、日立建機<6305>は40円高になったが、ファナック<6954>は230円安で日経平均寄与度は-9円。その中国や韓国が寒波に襲われてユニクロの「ヒートテック」が売れているファーストリテイリング<9983>は、通期見通しの連結純利益を25億円積み増して21%増益に上方修正。株価は1080円の4ケタ上げで昨年来高値を更新した。日経平均寄与度は+43円。ドコモ<9437>がスマホ向け格安料金プラン設定に加えて加藤薫社長がiPhone採用に意欲的という報道も飛び出して続伸。競争相手のソフトバンク<9984>は20円安で日経平均寄与度は-2円、KDDI<9433>は100円安で日経平均寄与度は-4円だった。スマホ向け音楽配信参入を表明したDeNA<2432>は155円高と買われ昨年来高値を更新している。同じゲーム関連では任天堂<7974>が480円高と株価を大きく上げた。

 円安の進行で自動車株は上昇し、トヨタ<7203>は55円高、ホンダ<7267>は50円高、マツダ<7261>は9円高で昨年来高値更新。電機株ではシャープ<6753>が37円高で値上がり率3位に入り300円台回復。ソニー<6758>は15円高、パナソニック<6752>は22円高だった。今週、注目度が高かったメガバンクは三菱UFJ<8306>5円高、みずほ<8411>2円高、三井住友FG<8316>45円高と揃って上昇。野村HD<8604>は3円安と売られた。後場に薬のネット販売規制を違法と認める最高裁判決が出て、原告2社のうちジャスダックのウェルネット<2428>は5円高だったが、マザーズのケンコーコム<3325>はストップ高で26.27%と急騰した。しかしその親会社で三木谷浩史社長自ら規制反対の署名集めをした楽天<4755>は2円安と下げている。

 吉野家HD<9861>は、並250円の低価格業態出店が裏目に出て、3~11月期は売上高は増えても営業利益は60%減で最終赤字に陥ったが100円高。売買代金1位のアイフル<8515>は17円高で、3位のオリコ<8585>は13円安。間の2位にシャープが入った。前日の主役の井筒屋<8260>は7円安とあっさり下落している。

 今日の主役は415円高の終値4500円で値上がり率ランキング5位に入った日本取引所グループ(JPX)<8697>。東証に上場した4日の大発会で大幅下落を喫して値下がり率“隠れ1位”だったが、ようやくジャスダックでの大納会の終値4300円を上回った。旧東証株を保有する中小証券会社がJPX上場後にそれを売って得た現金で社員に退職金を支払って会社を解散するという話が兜町では以前から語られていて、4日の急落で「やっぱりそうか」と思わせたが、1週間でそんな哀しい換金売りも一巡したのだろうか。(編集担当:寺尾淳)