「レディースクリニックはあっても産科がない!」医師の半数が「産婦人科医不足」を実感

2015年04月19日 18:02

画・分娩医数に地域差 10年後の出産難民セ_ロを目指す対策早急に必要

日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が、昨年12月にまとめた資料によれば、産婦人科医の新規専攻医は10年度をピークに減少を続けている

 産婦人科医が足りない。日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が、昨年12月にまとめた資料によれば、産婦人科医の新規専攻医は10年度をピークに減少を続けている。一施設あたりの平均分娩数は、2008年の475件から、2013年には511件と8%増加した。都市部と地方の格差も拡大しており、過酷な勤務実態も改善されていない。

 こうした状況を受けて、医師専用サイト「メドピア」が今年3月、全国の医師4083人にウェブアンケートを実施したところ、約半数が「自分の診療地域では産婦人科医が足りていない」と回答した。「どちらかといえば不足している」が23.4%、「不足している」が19.9%、「危機的に不足している」が6.1%で、合計49.4%の医師が、産婦人科医不足を実感している。地域別の不足感ランキングでは、1位が「福島県」だった。福島で診療する86.7%の医師が「不足している」と答えた。2位は「島根県」で80.8%、3位は「青森県」で80.4%。トップの福島県では、3人に1人の医師が「危機的に不足している」と答えており、2位の島根県の2倍となっている。

 福島で診療する医師からは、「産婦人科ばかりでなく、医師数が全科にわたり少ない。放射能の影響はいまだに続いています。この先も、退職の予定はあっても増員の話はありません(50代、一般内科)」、「勤務医1人、開業医1人で人口5万人ですから、不足している(40代、脳神経外科)」などの声が寄せられた。

 他の地域でも、状況は深刻だ。「お産を扱わないレディースクリニックは次々と開業しているが、お産を扱うところは極めて限られている印象です(50 代、眼科、東京都)」、「産婦人科開業医が婦人科のみに変更しているケースが増えており、公立病院の産科が満床状態です(40代、一般内科、富山県)」など、「婦人科」は増えているが、「産婦人科」が減っているという声が多い。

 また、「女性医師への育児休暇制度、復帰後再研修制度の充実、給与などの待遇、および男性医師に対しても同等の待遇を確立する必要があると思います(40代、家庭医療、青森県)」、「産婦人科医の人数は足りていると思いますが、結局は配置の問題。もっと増やせというよりは、もっと働きやすい環境を作ることが必要(30代、精神科、茨城県)」など、女性医師の増加を前提にした仕組みづくりを求める声も聞かれた。

 日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会のデータによると、男性の産婦人科医は、年齢が若くなるにつれて減少している。一方、女性は若いほど多く、女性医師の占める割合は40代で約50%、30代では約60%に達している。女性医師が働き続けられる環境が整わなければ、今後、産婦人科医不足はますます加速するかもしれない。社会全体で、男性中心的な長時間労働を見直そうとの機運が高まる中、医療分野も例外ではない。(編集担当:北条かや)