分娩医数に地域差 10年後の出産難民ゼロを目指す対策早急に必要

2014年12月03日 10:13

画・分娩医数に地域差 10年後の出産難民セ_ロを目指す対策早急に必要

日本産科婦人科学会は各都道府県での10年後の分娩医数を発表した。全体では約7%増となっているが、地域によっては著しく減少するところもある。

 日本産科婦人科学会は11月12日、お産に携わる分娩(ぶんべん)施設の産婦人科医(分娩医)が2024年に26府県で減少する試算を発表した。もっとも減少率が著しいのは石川県で25.8%減、続いて福島県20.2%減、宮崎県16.3%減、三重県14.8%減、岐阜県13.8%減となった。その他、10%以上の減少率が見込まれているのは、新潟県、島根県、山口県、長崎県、大分県、鹿児島県だった。

 反対に一部地域では増加するところもある。トップは東京都で32.2%増、茨城県25.9%増、兵庫県25.2%増、大阪府17.6%増、山梨県11.3%増になっている。産科医が減少していると言われて久しいが、全国規模での実態が明らかになったのは今回が初めてとなる。全体では、1万376人で約7%増と推測されているが、地域によって大きく差が出る結果となった。

 日本産科婦人科学会の調査によると、全国の分娩医は今年3月末で9,702人だった。産婦人科医の全体の人数は1万5,990人で、そのうちの約60%しか分娩を行っていないということになる。分娩医の平均年齢は46歳で、多くは体力的な問題から60歳以上になると分娩を扱うのを辞めるという。試算では定年時を基準に分娩医の人数を導き出し、新たに分娩医となる新人医師を推計して加えている。

 産科医不足により、近くの病院や、里帰り先で分娩の予約を取ることができない「出産難民」という言葉も生まれた。06年には奈良県で緊急搬送の受け入れ先が見つからず、たらい回しの末妊婦が死亡するという事件も起きており、医療訴訟も起こっている。医療機関全体に体制の見直しが求められているが、産科医の実情としては24時間体制の過酷な労働環境と、医療訴訟のリスクなどが重くのしかかり、分娩医を目指す学生が減っている。

 今回の調査でも10年後分娩医が減少することが予想された各地域では、35歳未満の若手産科医と、産科医を目指す研修医が少なく、反対に増加する地域では若手医師の育成が進んでいる。全国でもっとも増加率の高かった東京都では、08年から「都立病院における医師確保総合対策」を実施。産科医師不足対策として給与を増額し、異常分娩など過重労働がかかった場合や、研修医を指導する際には業務手当を支給している。地域格差をなくし、安心安全なお産環境を守るために、各地域で足並みを揃えた対策が早急に必要だろう。(編集担当:久保田雄城)