東芝が開発した量子インスパイアード最適化フレームワークの概念図。最適化制御AIが問題の特徴に応じて計算パラメータや実行マシンを自動選択し、通信や自動運転、ロボットなど動的環境で継続的な最適化を実現する。(画像:東芝ニュースリリースより)
今回のニュースのポイント
東芝は量子インスパイアード最適化計算機「シミュレーテッド分岐マシン」に状況判断を担うAIとイジングモデル圧縮技術を組み合わせた新たな最適化フレームワークを開発しました。通信状況や車載システム、ロボットなど刻々と変化する動的環境において、AIが最適な計算条件や実行環境を自動選択し、継続的な最適化を実現します。生成AIが注目を集める中で、AIは文章を作る技術から社会インフラを動かす技術へと役割を広げ始めています。
本文
東芝が発表した新たな量子インスパイアード最適化フレームワークは、人工知能の新たな活用領域を示す技術として注目されます。これまで人工知能は文章生成や画像生成など人間の思考を模倣して答えを作る技術として急速に普及してきましたが、今回開発されたシステムでは、人工知能が入力された組み合わせ最適化問題の規模や条件を判断し、最適な計算パラメータや実行環境を自動的に選択する司令塔として機能します。人工知能が計算そのものを高度に制御し、刻々と変化する現実世界の状況に応じて最適化の処理を安定的に継続できるシステムを構築した点が大きな特徴です。
その基盤となるのが、量子コンピューターの数理モデルを応用して大規模な組み合わせ最適化問題を高速に解く東芝独自のシミュレーテッド分岐マシンです。物流や通信、ロボット、自動運転などの分野では限られた資源の効率的な配分が求められますが、今回のフレームワークでは最適化制御AIが問題の特徴をリアルタイムに分析しながら、大規模な処理に適したFPGAと小規模な処理を高速にこなすCPUという二つの実行マシンを自動で使い分けることで、多様な条件下でも高速化と安定性を両立させました。
さらに、データ構造の共通性に着目したイジングモデルの圧縮技術を組み合わせることでデータ転送量や演算時間を削減し、システム全体の低遅延化も達成しています。無線通信の時分割多元接続スケジューリングを想定した実証評価では、問題の規模や通信状況が短周期で変化する環境であっても、従来のソフトウェアベースのMISソルバーと比べて高速に処理できることが確認されました。
こうした実用的な技術が社会実装されれば、無線通信の効率化だけでなく、自動運転車における瞬時の経路判断、工場ロボットによる効率的なタスク配分、複雑な物流ネットワークの運行管理など、極めて高いリアルタイム性が求められる社会インフラ全体の高度化につながる可能性を秘めています。近年の人工知能を巡るグローバルな競争は、生成AIによる文章作成や画像生成の精度向上に注目が集まりがちでしたが、今後は通信やモビリティ、産業システムを継続的に最適化するAI技術の重要性が一段と高まる可能性を示しています。
人工知能は「生成する技術」から社会インフラを最適化する技術へと役割を広げつつあり、東芝の今回の取り組みは、量子インスパイアード技術と人工知能を融合させることで次世代インフラの実装を加速させる重要な一歩と言えそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













