「車が売れないのは、若者が車に乗らなくなったせいだ」とはよく言われるが、本当だろうか。ソニー損保の「新成人のカーライフ意識調査2013」では、少し意外な結果が明らかになった。「『若者の車離れ』とは自分自身のことだ」という質問に対し、「あてはまる」と答えた新成人は32.6%、「あてはまらない」は41.4%となり、一概に「若者の車離れ」とは言えない結果となったのだ。
また、車への興味や好意を聞いたところ、「車に興味がある」が50.3%、「車に乗る必要性を感じない」では、「あてはまらない」が52.1%で多数派となった。新成人はおおむね、車に対して興味を持っており、車の必要性を感じていることが分かる。
しかし一方で、3割の新成人は車に対して興味を持っておらず、また「どちらともいえない」も2割いる。「若者の車離れ」についても、「あてはまる」「あてはまらない」「どちらともいえない」がそれぞれ同じような割合となっており、若者の車に対する価値観が多様化していることが伺える。さらに7割が「車を所有する経済的な余裕がない」と回答するなど、金銭的な理由から車を買わないという理由も見えてくる。
かつては社会全体で、「車を所有すること」に対する価値観が共有されていた。高い車を持つことはステータスで、そのために大学生や新入社員は無理してでも車を買い、「誰もが憧れる車種」があった。だが今はそうではない。非正規雇用の若者が増えるなど若者の経済事情は厳しいうえ、価値観が多様化して「車を持っていない」ことが以前よりもマイナスではなくなった。
若者の車に対するニーズは多様化しているのだ。バブル期の若者のように、車によって消費欲を満たす層も一定数存在するが、そのような価値観には全くコミットしない層もいる。それを十把ひとからげに「若者の車離れ」と嘆いたり、マスに向かって「免許を取ろう」というCMを流したりしても、かつてのように車が爆発的に売れることはないだろう。企業には、細分化する若者のニーズに対応していくことが求められているのではないだろうか。