川崎重工がJR東日本と鉄道システム用地上蓄電設備の実証運用を開始

2012年07月04日 11:00

 川崎重工が、同社の開発した鉄道システム用地上蓄電設備「BPS(Battery Power System)」をJR東日本管内の営業路線にある古里変電所に設置し、実証運用を開始したと発表。JR東日本管内で回生電力貯蔵装置の試験運用を行い、BPSを設置することによる省エネ効果などを調査する。

 BPSとは、川崎重工製大容量ニッケル水素電池「ギガセル」を、制御装置を介さずにき電線(架線)と直結できるシステムのこと。ギガセルは、高速充放電が可能で負荷応答性能が高く安全性に優れており、チョッパ装置などの電力変換器が不要なため、設備の低コスト化および小型化を実現する蓄電池である。交通インフラ分野におけるBPSをはじめ、太陽光発電や風力発電の出力安定化や災害時の自立運転システム、船舶向け蓄電装置など様々な分野での用途に展開しているという。またBPSは、制御装置を介さないことから制御遅れや制御損失がなく、高い省エネ効果が得られ、かつ信号設備に対する誘導障害の原因となる高調波を発生させないことが特長となる。

 今回の試験に際し、両社は共同研究開発契約を締結。川崎重工はBPSの設計・製作および試験データの測定・分析を担当し、JR東日本は試験フィールドの提供およびBPSの運用業務を担当する。実証運用は2013年2月まで断続的に行われ、稼動時と休止時の比較を行いながら、季節ごとの省エネ、電圧安定化等の性能分析を実施する。

 大阪市交通局やニューヨーク地下鉄、東急電鉄などでの実証試験を経てきたBPS。都市圏大停電を想定した試験では、直流750Vき電線にて、BPSのみで10両1編成を2.5キロ離れた駅まで走行させることに成功しているという。この性能をどこまで高めることができ、実用化が進むのか。今後の動向に注目が集まるところであろう。