飽和状態のグルコサミン市場に一石を投じのは

2012年07月02日 11:00

 知名度が高く、効果実感を得られやすいサプリメント素材として市場を牽引するグルコサミン。矢野経済研究所によると、2010年度には市場規模は前年度比130.2%の44億円となったものの、その後2011年度は44億4000万円、2012年度は45億円と成長が鈍化すると予測されるなど、飽和状態といえる市場である。その為、各社が差別化を目的に様々な成分をグルコサミンと共に配合した製品を市場に投入しているが、中でも近時注目を集めているのが筋骨草エキスである。

 筋骨草とは、古くから民間薬として切り傷・腫れ物・高血圧・発熱・腹痛などに煎じて服用されていたシソ科の多年草のことで、骨の形成促進や抗炎症効果などが期待されているものである。現在では、AFC?HDアムスライフサイエンスの100%子会社であるAFCや松浦薬業などが、この筋骨草エキスを配合したグルコサミンのサプリメントを販売している。この筋骨草エキスに関し、アサヒグループホールディングスが4月・6月と続けて研究発表をしたことで、注目度が高まっている。

 4月に発表された内容は、アサヒグループホールディングスの食の基盤技術研究所とアサヒフードアンドヘルスケアが鳥取大学獣医学科臨床獣医学獣医外科学教室と共同で実施していた研究に関するもの。この共同研究により、グルコサミンと筋骨草エキスの併用摂取が、損傷した軟骨に対して相補的に修復を促す効果があること、また、筋骨草エキスには軟骨下骨(軟骨のすぐ下の骨)の損傷修復も促進する効果があることが判明したという。

 また6月に発表されたのは、順天堂大学医学部生化学・生体防御学講座との、筋骨草エキスが関節痛を和らげる効果とメカニズムについての共同研究結果である。関節の一部(滑膜)の細胞を用いて筋骨草エキスを投与する比較実験を実施。この細胞はヒト体内の炎症を擬似的に模倣したもので、ヒトの体での効果を再現しているとのこと。そして実験の結果、何も加えない場合と比較して、痛みをもたらす炎症性物質を最大で約2割抑制する抗炎症効果を確認した。

 高齢者比率が高まるにつれ、加齢に伴い発症するひざの痛みを抱える患者も増加している。中でも主な疾患と言われる変形性膝関節症の推定患者数は、50歳以上で2400万人とも言われているという。関節の疾患は要支援、要介護の原因ともなるものである。こうした疾患を予防することは、将来の医療費や介護費の削減などにも繋がる非常に有意なものと言えるであろう。すでに飽和状態となっている市場でも、上記のような併用摂取に対する研究が進めば、単なる他社製品との差別化となるだけではなく、さらなる市場の成長が期待できる。今後とも、信頼できるメーカーによる、信頼できる研究結果に基づいたサプリメントが商品化され、普及することを期待したい。