富士キメラ総研の調査によると、2011年度はマイナス成長となった世界の半導体実装関連市場。こうした中、前年比3.5%増の4兆2758億円と伸長しているのが、電子機器の回路基板となるプリント配線板の市場である。国内のプリント配線板市場は縮小傾向にあるものの、ハイエンド製品向けの大型・高多層基板は高速大容量データ通信インフラの投資伸長などにより需要が堅調であるなどのプラス要素もあり、この市場に注力する企業も多い。
6月21日には、OKIが田中貴金属のプリント配線板事業買収を発表。田中貴金属は、プリント配線板事業を1970年より開始し、大型・高多層基板を航空・宇宙産業向けに提供していた。OKIは、今回の事業譲渡を受けることでハイエンド製品向けプリント配線板事業の国内シェアを拡大するとともに、プリント配線板から最終製品組立までの一貫受託生産も拡大し、2011年度は売上高176億円だったEMS事業で2015年度に500億円を目指すという。
また、凸版印刷とトッパンNECサーキットソリューションズ(TNCSi)は、偽造防止効果が高い「セキュアプリント配線板」を発表。偽造品が増えているプリント配線板に対し、従来行なわれていた梱包材にセキュリティシールを貼るなどの間接的な対策とは異なり、プリント配線板上に直接、セキュリティインキを用いて偽造防止加工を施すもので、不可視インキや特殊な製造ノウハウを要することから、非常に偽造防止効果が高い。
さらに、プリント配線板市場の伸長と相俟って、2011年の市場が前年比2.0%増の1兆9593億円となっているのがプリント配線板材料市場である。この分野でもJX日鉱日石金属が、視認性に優れ、より微細な回路を実現できる超低粗度圧延銅箔の開発に成功し、本格的な販売の開始を発表している。圧延銅箔は、厳しい折り曲げ加工が要求されるフレキシブルプリント配線板(FPC)に用いられるもの。スマートフォンやタブレットPCに搭載される液晶パネルの高精細化に伴い、低粗度かつ視認性に優れた圧延銅箔の開発が求められており、このニーズに応えるものとなっている。
諸外国の技術水準が向上し、高機能分野においても韓国や台湾メーカーの製品の採用が拡大している半導体実装関連市場。先の富士キメラ総研の調査によると、2011年も日系メーカーが全体市場の35%を占めたが、プリント配線板とプリント配線板材料市場では台湾メーカーが日系メーカーより高いシェアを獲得しているという。日系メーカーの復権は見られるか。この市場に注力する企業の技術力や開発力、今後の事業戦略に期待したい。