ヤマハ発動機のマリン事業とは

2012年06月25日 11:00

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工場での生産ラインには部品配膳(キット)方式が採用され、品質と生産性向上が実現されている(写真はヤマハ発動機袋井南工場)

 ヤマハ発動機のマリン事業が注目を集めている。世界で3兆円と言われるマリン市場で、3000億円の売上高を目指すという挑戦はいったいどのようなものなのだろうか。

 同社は先日、マリン事業において、2010年代の後半には3000億円の売上高を目指すことを明らかにした。これは09年の1500億円からみると実に2倍の売上高であり、この市場への期待と同社の自信が感じられる。

 この裏付けとして、リーマン・ショック以降、下降していた売上高が、超円高環境にありながらも10年から順調に回復しているという実績があり、12年も計画通り、ほぼ2000億円に達する見込みだ。この売上高は07年当時の為替水準で言うと、2800億円に相当し、完全に回復傾向にあるとも言えるのである。これには先進国の市場回復に加え、ロシアやブラジルなどの新興国の市場が拡大していること、世界トップレベルの競争力により高いマーケットシェアを維持していることなどが背景として存在している。

 現在、同社のマリン事業の3本柱は、「船外機」「WV(ウォータービークル)」「ボート」だ。

 「船外機」においては、高品質な商品と3S(セールス・サービス・スペアパーツ)政策との合わせ技により非常に高い”信頼性”を得ている。また、130機種ものラインアップを用意し、それぞれの市場に適した商品を供給しており、全世界でのシェアは圧倒的だ。特に最近では、新興国での売上の伸び率が目覚ましい。例えばブラジルでは元々のメインユーザーである中間所得者層が増加したことで急激に売上を伸ばし、また、ロシアでは週末を水辺の別荘で過ごす人々の間でボート保有が増えている。こういった需要を取り込むことが同社のシェア拡大に貢献している。

 北米市場が中心の「WV」においては、”ヤマハブランド”の強みでもある艇体技術や、オートバイで培ったエンジン技術の信頼性とその販路を上手く使うことによって、市場で高いプレゼンスを維持している。

 そして「ボート」では、国内で培った開発・製造・ソフトの強みを活かし、中国・韓国への完成艇の輸出やロシア・南米のボートビルダーへの技術援助など、海外展開に積極的な攻勢をかけている。

 さらに、同社ではレジャー用途として使われる商品の国内市場開拓でも新たな可能性を探っている。

 レジャー用ボートの市場が縮小傾向にある国内だが、若年層での新規免許取得者が増加傾向にある。同社では、この新規層が手軽にボートを楽しむ機会を増やすために、会員制のレンタルボートビジネス「Sea-Style」を展開しており、高年齢層での所有率が圧倒的に高い”レジャー用ボート”のユーザー予備軍として大いに期待される若年層の囲い込みに有効であると見ている。

 グローバル戦略の展開だけではなく、国内市場の動きも含めてヤマハ発動機のマリン事業の動向から今後も目が離せない。