NECと東北大が身近な熱源から発電できる新原理の素子開発

2012年06月19日 11:00

 NECと東北大学が、身の回りにある熱エネルギーから発電することができる熱電変換素子において、新原理「スピンゼーベック効果」を用いて、発熱部分にコーティングすることで利用できる新しい素子を開発したと発表。家庭や工場、電子機器や自動車などの様々な発熱部分で大量の発生する廃熱を、電気として有効利用できるようになるという。

 従来から、廃熱から発電できる熱電変換素子の利用が進められていたものの、素子の構造が複雑、大面積化が困難などの課題があり、利用シーンが限られていた。今回開発された熱電変換素子は、こうした課題を温度差から磁性体のスピン流が発生する「スピンゼーベック効果」を利用することで解決したもの。スピンゼーベック効果とは、温度差をつけた磁性体において、温度勾配と並行に電子の磁気的性質であるスピンの流れ(スピン流)が生じる現象のことで、これにより、シンプルな素子構造を実現するとともに、簡易な塗布プロセスを利用できるため、従来の素子に比べて製造工程が簡易になっている。

 具体的には、磁性体と金属電極を基板上に積層するシンプルな二層構造を採用している。一層目には、温度差によりスピン流が発生するスピンゼーベック効果を利用する磁性体を使用し、二層目には、一層目で発生したスピン流を電流に変換する作用をもつ金属電極を使用。さらに、磁性体の形成には塗布プロセスを利用。これらにより、製造プロセスを簡易化や、大面積化や、曲面・凹凸面など様々な形状や材料の熱源上へのコーティングによる素子形成を可能としている。

 あらゆる利用シーンが考えられるという今回開発された熱電変換素子。自動車での利用が進めば、HVはEVの走行距離の伸長に繋がるであろうし、工場や電子機器での利用が進めば節電効果が一気に高まるであろう。どういった製品に搭載されて我々の生活に入ってくるのか。一日も早い実用化を期待したい。