日立プラントテクノロジーと住友商事が、イラクの国営石油会社であるSouth Oil Company(SOC)との間で、日立プラントテクノロジーの石油関連分野向け先進水処理システムのイラク国内への導入に向けて検討を開始することで合意し、覚書を締結したと発表。まずは、イラク南部にあるSOC保有の油田に日立プラントテクノロジーが開発した「随伴水処理システム」の実験機を設置し、その性能を検証する。
原油を採掘する際、原油に混在している地下水や、原油を採掘するために油田に注入する水が「随伴水」として排出される。この随伴水は、地層の特徴に応じて種々の化学成分を含有するため、水処理を行った上で油田に再圧入もしくは放流するのが一般的なものの、随伴水量が多くなることによる処理コストの増加や、環境意識の高まりによる環境規制の強化、水不足地域における随伴水の有効活用などのニーズが高まっていた。日立プラントテクノロジーの「随伴水処理システム」はこうしたニーズに対応し、随伴水の高度処理を実現するとともに、油田への再圧入水の水質向上による油田寿命の長期化とオペレーションコストの低減、さらには慢性的な水不足への解決にも資するもの。また、コンパクト設計のため、スペースの限られた海上プラットフォームに本システムを設置することも可能で、陸上に送る油田随伴水用の送水配管・ポンプが不要になるという。
イラクは、世界有数の産油国であり、今後も油田開発などの石油関連産業への投資が予想されている。世界的に再生可能エネルギーへの関心が高まる一方で、既設火力発電所の出力増加や新興国における新設など、依然その需要は高い。産油国への実験機設置・性能検証は、日本が産油国との良好な関係を築くためにも有効であろう。世界のエネルギー獲得競争を勝ち抜くためにも、今後も産出国に対する今回のような貢献が活発化することを期待したい。