このところ、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン<2142>に勢いがある。同月比過去最高入場者数を次々と更新し、昨年出された年間過去最高入場者数、1270万人を塗り替えることがほぼ確実と見られてきた。
経営の面では米ケーブルテレビ大手コムキャストが、主要株主のゴールドマン・サックスから株式の過半数を取得することで合意するなど話題に事欠かない。この際、コムキャストはゴールドマン・サックスなどから株式の51%を15億ドル(約1830億円)で取得するが、以前の大口株主であった大阪市は2009年に所有する20万株をゴールドマン・サックスへ100億円で売却している。上場廃止当時の発行株数が218万株だった事を考えると、大阪府の持ち株比率は9.2%となり、今回の1件でゴールドマン・サックス側は6年前に大阪府から購入した20万株分を330億円で売却し230億円の利益を手にしたことになる。
大型商業施設の活況が地域へもたらす効果も大きい。観光庁が発表する「宿泊旅行統計調査」によると大阪府の客室稼働率は、2011年68.2%から14年には81.4%と、80%を超え、伸び率13.2%であった。全国の平均稼働率58.4%、伸び率10.2%と比べても高い水準といえる。
好調の牽引は、昨年7月、総工費450億円を投じて完成させた新しいアトラクション施設、映画「ハリー・ポッター」をテーマにした新エリアであるが、他にもアニメ・ゲームとのコラボレーションした期間限定アトラクションも要因の一つといえるだろう。
アトラクションの一つ、15年夏季限定で開催した「妖怪ウォッチ・ザ・リアル」は、アニメの世界をリアルに再現し本当の妖怪に会えると評判だ。人気により終了日が9月6日から10月12日と延長が決まった。最終日には1日限りの特別イベント「コスチューム・パーティ #仮装で熱狂」×妖怪ウォッチの特別バージョンが開催される。
恒例の人気イベント「ユニバーサ¬ル・サプライズ・ハロウィーン」にも工夫が見られる。海外のホラー映画だけでなく貞子・呪怨など日本のコンテンツを年々増やし、今年は9種類ものアトラクションが用意された。それぞれのアトラクションはホラーレベルと呼ばれる10段階の指標で表され、これまでで一番怖いとされるレベル10の「トラウマ~最恐実験病棟~」は、ローソンなど専用エクスプレス・パス購入時に誓約書が必要という。また、仮装をして来場者が参加する「パレード・デ・カーニバル」や、ハリウッドの特殊メイク(有料)など実際に体験できるイベントも好評だ。
かつてのUSJは大人の男性も楽しめる迫力あるアトラクションで人気ではあったが、女性と子供をうまく取り込めていなかった。これら新しいアトラクションで、それらの層を取り込み今回の来場者数の拡大につながった。
これからの展開としては、16年1月から期間限定で開催される「ユニバーサル・クールジャパン 2016」において、日本を代表するアーティスト「きゃりーぱみゅぱみゅ」、アニメ「進撃の巨人」「エヴァンゲリオン」、ゲーム「バイオハザード」「モンスターハンター」などハリウッド映画の枠にとらわれないアトラクションで、さらに新しい層を取り込むことになりそうだ。
好評のアトラクションは、どれも参加者が自ら人気コンテンツの世界を体感できる。このようなエクスペリエンスエコノミー(体験型経済)が、これからのテーマパークを牽引する鍵であると言えそうだ。さてこの秋、皆さんも三本の箒でバタービール飲みながらバーティー・ボッツの百味ビーンズをつまみ、物語の世界を体感してみてはいかがだろうか?(編集担当:久保田雄城)