本格農場から家庭菜園まで生産性向上、防災にも役立つ土壌環境センサー、ラピスセミコンダクタから

2015年10月10日 19:26

Lapis Sensor

センサーそのものは写真上部に載せたように5×5mm四方。これを地中に埋めて無線通信で土壌環境をスマートフォンやタブレットなどで確認できる。ディスプレーモニター右の電子体温計のような装置は、先端に装着したセンサーを鉢植えやベランダの植栽などの土壌に挿してその状態測定を行なう簡易機器のプロトタイプ。

 土壌環境のリアルタイムモニタリングが可能なセンサーを京都の半導体企業ロームグループのラピスセミコンダクタが開発し、10月7日から千葉・幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2015」で発表した。農業生産現場の耕作地における生産性向上や防災対策などの社会インフラ監視としてのIoT(Internet of Things/モノのインターネット)ソリューションに役立てようという新しいセンシングデバイスである。

 ラピスセミコンダクタが開発した5×5mm四方ほどの同センサーを地中に埋め込み、最適な無線通信と組み合わせることで、耕作地であれば土壌の水分量や温度、酸性度(Ph値)をリアルタイムでモニタリングして、散水や肥料投入などに利用することができ、農産物の生産性向上につなげられる。

 また、土砂崩れなどが起きやすいとされる法面(のりめん)土壌などで、降水に伴う土壌に蓄積した水分量を計測し防災対策とするなどの社会インフラ監視にも役立つという。

 同センサーは、静岡大学工学部・二川准教授との共同開発で、半導体の適用領域とは異なる多くの大学や研究機関と協力し、技術改良を行なってきた。今後は社会インフラ分野、農業分野、ヘルスケア分野などへの応用に向けて、ソリューションパートナーとともに実証実験を開始する。

 近年IoTへの注目が高まり、さまざまな環境情報をセンシングしデータを解析することにより、安全や生産性向上に役立てるという流れが活発化してきた。こうしたなか、ラピスセミコンダクタでは、大気に比べて環境情報のばらつきが大きいといわれる土壌環境を“見える化”し、農産物の生産性向上などに利用しようという市場ニーズ高まりに応える形で今回のセンサーを開発した。

 すでに国内の一部の企業農場などで、農産物圃場モニタリングが実際に行なわれている。が、これまでの方法では、土壌を実際に採取し、評価検査機関や施設に送って分析するという方法が一般的だった。そのため、数メートル単位で大きく変化する土壌環境のリアルタイム計測や広範囲の土壌情報を同時に取得することは困難だった。

 今回開発したセンサーは、酸性度の測定部にISFETを採用し水分量や温度計測のセンサーをワンチップ化し小型化した。構造面の最適化により土壌モニタリングの精度面での課題であった接触性、耐久性も向上させることに成功。計測したいエリアの土壌に簡単に埋め込むことができ、無線通信を組み合わせることで、広範囲かつリアルタイムでの土壌環境モニタリングを実現する。通信方法はモニターする土地の規模に応じてBluetoothからWi-Fi、Wi-SUNなど通信距離に応じて選択できるという。

 ここで登場したISFET(Ion Sensitive Field Effect Transistor/イオン感応性電界効果トランジスタ)とは、イオン感応膜を有するFETで、イオン活量によって発生する測定サンプルとイオン感応膜の表面電位を検出するトランジスタ。これは、ラピスセミコンダクタのシリコン半導体製造技術により作製できる。(編集担当:吉田恒)