富士経済が7月にまとめた「2015年版 HEV・EV関連市場徹底分析調査」によると、2014年のHV(ハイブリッド自動車)、PHV(プラグインハイブリッド自動車)、EV(電気自動車)の合計世界市場は203万5600台となった。さらに、今後の市場予測としては、2025年には680万8000台、2030年には1179万4000台、2035年には1705万1000台に達する見通しを立てている。
米国では、ニューモデルの投入を待つ買い控えや、ガソリン価格の下落なども相まって、消費者が買い渋ったため、市場は停滞をみせているが、欧州各国では逆に、2021年からCO2排出量の規制が厳しくなることなどを背景に需要が増加している。また、我が国でもガソリン価格の高騰や、大手国産メーカーのニューモデル導入などにより、市場は拡大傾向にある。
市場の拡大とともに、自動車メーカーだけでなく、関連部品メーカーも活気づいている。例えば、国内電子部品大手の京セラ<6971>などは、車載用のデバイスやセンサー類だけでなく、エンジン部品等を削る切削工具や、車載ディスプレイ、車載カメラなど、広く商品とサービスを提供しており、シェア拡大を目指している。
また、自動車部品事業が売り上げの約8割を占める住友理工<5191>も、主力商品である自動車用防振ゴムをはじめ、オリジナルの車載部品の開発に余念がない。例えば、同社は3年前、ウレタンを磁界中で発泡・成形する独自の磁気誘導発泡法を活用した「磁気誘導発泡ウレタン材(MIF)」を開発している。これは、発泡ウレタンの吸音特性とMIF特有の熱伝導性を活用したモーター用吸音材で、モーター本体をMIFですっぽりと覆うことで約10デシベルの防音効果が得られるという。これを可能にしたのは、通常の発泡ウレタンに比べて、なんと約10~50倍という放熱性能。通常のウレタン材では20度近くも上昇するモーターの熱を逃し、表面温度をモーター単体と同程度に保つことができるという。
車は身近な移動手段であるとともに、多くの時間を費やす居住空間でもある。HEVやEVを語るとき、今はまだ、どうしても燃費性能ばかりに注目が集まることが多いが、今後の普及に伴って、ガソリン車との差別化を図る意味でも、快適性や静粛性に対するニーズが高まってくるだろう。そして、そういった需要に応える繊細な技術は、日本の技術者たちの最も得意とするところだ。日本の車載部品メーカーのグローバルな活躍に期待したい。(編集担当:藤原伊織)