クルマのなかの多重通信を実現する次世代IC、ロームが発表。ワイヤーハーネスを削減し省燃費を達成

2015年09月26日 20:28

CXPI

ロームが発表した自動車のワイヤーハーネス(配線)を削減する車載通信用トランシーバーIC「BD41000FJ-C」

 国産自動車メーカーの燃費向上競争が止まらない。2015年10月28日から11月8日(一般公開は30日から)に開幕する第44回東京モーターショーで、トヨタのハイブリッド車(HV)「プリウス」の一部グレードで40km/リッターの世界最高燃費を達成したと発表するはずだ。

 自動車の燃費向上策には、いくつかのベーシックな方法がある。代表的なものはパワートレインの改良だ。先のプリウスのようにパワートレインをハイブリッド化するのもひとつの対策だ。トヨタ・オーリスやホンダ・ステップワゴンのように、最近のトレンドであるエンジンのターボ化によるダウンサイズも燃費向上と動力性能アップを狙った方法だ。マツダCX-3のようにクリーンディーゼル搭載もしかりである。

 もうひとつ燃費向上策として効果があるのが車両の軽量化だ。新型プリウスのハイブリッドユニットは先代からのキャリーオーバーながら、車体設計にTNGA(トヨタ・ニューグローバル・アーキテクチャー)と呼ぶモジュール設計で軽量化する。同時にデンソーと協働したシリコン半導体に代わる熱と高電圧に強い新世代のSiCパワー半導体を多用してPCUやECUなどの電装部品を大幅に小型軽量化しているはずだ。

 今年、市場に投入となったマツダ・ロードスターもエンジンを従来の2リッターから1.5リッターに小型軽量化し、加えてエンジンやボディだけでなく、小さなビス1本に至るまでグラム単位の軽量化策を講じて車重1トンを切った。

 こうした自動車の軽量化要求が厳しくなるなか、クルマの電装化はどんどん進んでいる。エンジンは常にECUやPCUが監視し、適切な燃料供給とバルブタイミング、点火を管理する。さらに、ABS(アンチロックブレーキ)やブレーキアシスト、ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム/車両安定化装置)、自動ブレーキなど、高い信頼性が必要とされる電装システムがますます増える傾向にある。

 クルマを運転するときに常にドライバーが触れているステアリング周囲にもいくつもの電装スイッチが備わる。ライトやワイパー、オーディオコントロールスイッチなどだ。インパネにはナビやエアコンのスイッチが並び、センターコンソールには、走行モードスイッチやコントローラーがある。ドアにはオーディオスピーカーやパワーウィンドウスイッチ、ドアミラーリモコンが備わる。これらは、それぞれ独立したワイヤーハーネス(配線ケーブル)で、スイッチ・センサーや電装品を結び、ECUやリレースイッチなどを介してシステムを稼働させる。

 こうしたワイヤーハーネスにはシステムを正確に動かすための高い信頼性が求められる。つまり、正しく電流を流す導線(銅線)がいくつも配されることになる。そして、このクルマのなかに張り巡らされたハーネス(銅線)の重量が車両軽量化にとって、なかなか厄介な問題となるのだ。

 このハーネスを統合利用して、その本数を削減する車載通信を実現する汎用性の高いトランシーバーICが開発された。これまでも車載ハーネスを削減する通信の多重化は、エンジン周囲のECUをつなぐCAN(Controller Area Network)やインパネ周囲の通信ではLIN(Local Interconnect Network)として存在していた。が、先に述べた、ステアリング周囲のライトやワイパー、オーディオコントロールスイッチなどのHMI(Human Machine Interface)領域で使える信頼性の高い通信方式が無かった。

 今回、京都の半導体メーカーであるローム株式会社<6963>が発表したトランシーバーIC「BD41000FJ-C」は、このHMIに最適な通信方式CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)に準拠する。CXPIは、現在、ロームを初めとした半導体ベンダーや日本のOEMメーカーが国際標準化へ向けて活動している方式。この方式を使えば前述したLINにおける通信の信頼性もアップする。

 このローム製トランシーバーIC「BD41000FJ-C」の登場で、自動車のワイヤーハーネスを大幅に削減、車両重量軽減が達成できるのは間違いない。クルマの省燃費は止まらない。(編集担当:吉田恒)