野村総合研究所(NRI)は、2016年4月に始まる電力小売り自由化の影響に関する調査を実施した。NRIが独自に開発したエリアデータ分析ツールMarket Translator (マーケット・トランスレーター)を用いて、8月に実施した生活者向けアンケート結果や各種統計データを分析し、全国・町丁目単位で一般家庭において新電力会社へ乗り換えが見込まれる電気料金を、2016年度について推計した。
アンケートで、電力会社を乗り換える際に重視する要素について調査した。要素としては、「価格(電気料金)」、「エネルギー源」、「手続きの容易さ」、「安心感」、「実績」の5つの選択肢を用意している。その結果、最も重視されているのは「価格(割引メニュー・セット割引等)」で、乗り換え要因全体に占める割合は46%。それに続くのは、「新電力会社に対する安心感(信頼度)」15%、「切り替えの手続きが容易であること」15%、「新電力会社のサービス実績(経過年)」14%、「電力発生源が自然エネルギーであること(太陽光・風力など)」10%となっている。
また、料金以外の要素を・エネルギー源:石油・天然ガス・変更手続き:携帯電話会社の変更手続きと同程度・安心感:新電力会社は多くの人が知っている大企業・実績:1年未満(まわりに新電力会社を利用している人がまれな状態)、と設定した上で、既存の電力会社の料金に対する値引き率と電力会社の変更の関係について、アンケートで質問をした。
その結果、5%の値引き率では乗り換え意向を持つ世帯の割合が3%にとどまるのに対して、10%の値引きでは16%となった。「1割引」が消費者に訴求する一つのベンチマークになる可能性があるという。全国の家庭向けの電気料金に金額換算すると、新電力会社に移行する電気料金は、5%値引きで約1,800億円、10%では、約8,900億円と推計された(金額は値引き後の料金)。
ただし、実際には新電力会社の積極的な宣伝・営業活動や、他サービスとのセット割引や多彩な料金メニューなどにより、人々の乗り換え意識が喚起されることで、この調査結果よりも高い割合で乗り換えが進む可能性もあるとしている。
5%の値引き率で推計した時に、新電力会社への乗り換え率が最も高い都道府県は、東京都の3.8%。それに対して最も乗り換え率が低いのは岩手県の2.6%だった。10%の値引き率においては、都道府県別の乗り換え率の差が、値引き率5%の場合に比べて相対的に小さいものとなった。 (編集担当:慶尾六郎)