家庭のエネルギー消費量は高機能家電などの普及に伴い年々増加しているなかで、給湯の占める割合は全消費量の約3割とされ依然高い。低炭素化を推進するうえで家庭用給湯機分野の省エネ化が求められ、2001年に登場した省エネタイプ給湯装置として「エコキュート」が知られている。2014年に累計出荷台数で400万台を突破したが、エコキュートは、4人以上が生活する標準世帯を対象とした比較的に大型な機器だ。そのため少人数世帯や集合住宅には普及していない。
エコキュートを2002年から販売しているダイキン工業の調べでも、「エコキュート」は使用湯量が多く光熱費の削減効果が高い4人以上の世帯で普及が進んだ。が、一方で、戸建住宅の約60%を占めるといわれる3人以下の世帯、集合住宅においては普及が進んでいない傾向があるという。
そのような背景を受けて開発されたのが、使用湯量が少ない少人数家族向けのヒートポンプ給湯機「ネオキュート」だ。エコキュートとの大きな違いは、エコキュートが自然冷媒である二酸化炭素(CO2)を使っているのに対して、ネオキュートは家庭用エアコンなどで使用する新冷媒HFC32(R32)を採用したことだ。
また、軽量コンパクトなヒートポンプユニットは設置スペースが確保できず貯湯タンクから離れた場所に置く場合でもルームエアコン室外機と同様に自在な設置が可能。割安な夜間電力を利用してお湯を沸かし、従来型給湯器と比較して省エネ性に優れるヒートポンプ給湯機「ネオキュート」を新たに3人以下世帯向けに投入することで、エコキュートと共にヒートポンプ式給湯機全体のさらなる普及促進が図られる可能性が高まってきた。
ネオキュートのお湯沸き上げ温度は約65℃。エコキュートの90℃と比較してかなり低い。貯湯量も320リッターと3人家族が1日で使うお湯の量とされる380リッターに届かない。が、お湯を使う温度が42℃だとすれば、420リッターの湯量に相当する。2?3人程度の小家族なら十分といえる量だ。ランニングコストが抑えられるのも大きなメリットで、そのコストは一般的なガス給湯器の30?40%との試算もある。
ネオキュートのもうひとつの特徴は、システム全体が軽量&コンパクトなことだ。ヒートポンプユニットはエアコンの室外機と変わらない質量28kg前後で、エコキュートのヒートポンプ装置の約半分の重さで、マンションなどのベランダにも設置できるサイズだ。
貯湯ユニットとヒートポンプ装置を冷媒配管で繋ぐが、HFC32(R32)冷媒を使っているので、普通のエアコンと同じで配管を長くしてもロスを最小にできる。ユニット間の最大距離は20mまで、高低差12mまでOKだ。これなら、設置場所に柔軟に対応したレイアウトが可能だ。
先の東日本大震災以降、家庭用給湯&エネルギー供給システムは電力だけ、あるいはガスだけからの脱却を叫ぶ声もある。が、ヒートポンプを中心にした冷媒制御技術により、冷房時の廃熱を給湯に利用する熱回収システムなど、さまざまなニーズを追求した空調・給湯ソリューションが生まれてきそうな予感がする。(編集担当:吉田恒)