ロームがタブレットPCなどの低消費化に貢献するパワー半導体を開発

2012年06月11日 11:00

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ロームが、サーバーやノートPC・タブレットPC等で使用される低耐圧DC/DCコンバータ向けパワーMOSFETを開発したと発表している。

 省エネルギー化の鍵を握るとして注目を浴びるパワー半導体。矢野経済研究所の調査によると、2011年のパワー半導体市場は156.7億円であったのが2017年には261.2億円にまで伸長すると予測されている。近年はIGBTモジュールの割合が増加しているものの、依然45.2%もの割合を占めているのが、MOSFETである。近時も様々な用途に向けたMOSFETが各半導体メーカーから製品化されており、市場が活気づいている。

 4月にはIRジャパンが、非常に低いオン抵抗(内部抵抗)が特徴のTSOP-6パッケージ採用を採用したHEXFETパワーMOSFETシリーズ4品種を発売。ルネサスエレクトロニクスも、スマートフォンなどの携帯機器等向けパワー半導体として、2mm×2mmの超小型パッケージ採用セミパワーMOSFET、20V耐圧(VDSS)の「μPA2600」と30V耐圧の「μPA2601」を製品化し、2012年4月よりサンプル出荷を開始している。

 こうした中、6月4日にはロームが、サーバーやノートPC・タブレットPC等で使用される低耐圧DC/DCコンバータ向けパワーMOSFETを開発したと発表。耐圧30Vで計16製品をラインアップしている新シリーズは、ローム独自の高効率特性により、各種機器のDC/DC電源回路における低消費電力化に貢献するもの。微細化のほか、ローム独自の低容量構造と新構造となる「トレンチ型フィールドプレート構造」の採用により、低ゲート容量と低オン抵抗の両立を実現。DC/DCコンバータ向けパワーMOSFETの性能指数として用いられる「FOM」を従来品に比べ50%低減し、業界トップクラスの高効率性を実現しているとのこと。さらに、同期整流回路での性能を確保するため、Rg(ゲート抵抗)、UIS(L負荷アバランシェ耐量)については100%試験を実施しており、品質面でも高い信頼性を誇っているという。

 パワーMOSFETは、同期整流方式降圧型DC/DCコンバータなど各種電源回路に搭載されており、電源の電力変換効率アップに直結する重要な役割を担っている。低損失で高効率のパワーMOSFETを実現するためには、オン抵抗及びゲート容量の低減が重要となるものの、これらはトレードオフの関係のため、両立が非常に困難だという。日本企業には、こうした困難を世界に先駆けて解消していく技術力がある。他の分野では他国の企業に後背を期している日本企業であるが、伸長が確実視されるパワー半導体市場ではイニシアティブを握っていけることを期待したい。