【今週の展望】2万円到達と2万円台への定着では、話は別

2015年11月23日 20:32

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待望の2万円到達後に下げたとしても、前週までレジスタンスラインだった19700円が、今度はサポートラインになる。敵を兄弟に変える、優しい法則。

 3連休で水が入るが、その調子が今週も持続すれば3ヵ月ぶりの日経平均2万円回復はまず間違いないだろう。むしろ、2万円に乗せた後、政策の後押しを受けてどこまで上昇できるかを論じるべきかもしれない。その上値をテクニカル指標で推し測ってみよう。

 20日の日経平均終値19879.81円のテクニカル・ポジションは、移動平均線は全て下にある。上から順番に19682円の5日移動平均、19362円の200日移動平均、19111円の25日移動平均、18904円の75日移動平均。前週20日には25日線が75日線を上に突き抜ける「ゴールデンクロス(GC)」が出現した。その後の相場が強含みになる吉兆とされる。

 日足一目均衡表の「雲」は17912~18924円にある。今週の雲は24日から27日まで、上限は18924円、下限は17967円で両方とも固定される。変化が乏しい上に20日終値時点で雲の上限は955円も下にあるので、おそらくその影響は軽微だろう。ボリンジャーバンドでは、20日終値は25日線+1σ(19643円)と+2σ(20174円)の間にある。ちなみに-1σは18580円で1299円も下にある。

 オシレーター系指標は相変わらず基準を超えた「買われすぎシグナル」が点灯中。基準の120を超えて127.1の騰落レシオ、基準の+50を超えて+59.4のRCI(順位相関指数)、基準の70を超えて82.3のストキャスティクス(9日・Fast/%D)、基準の75%を超えて83.3%(10勝2敗)のサイコロジカルライン、基準の70を超えて79.6のボリュームレシオと、5つもある。一方、25日移動平均乖離率は+3.9%で、基準の5%も4%も下回っている。RSI(相対力指数)は68.1で、これも基準を下回った。

 終値19000円台の1000円幅を12営業日で上に通過しようとしているので、買われすぎシグナルが出てしまう。しかし、その2倍以上の2227円幅を8月21、24、25日のたった3営業日で下に通過した「暗黒の3日間」の時は、初日8月21日には「売られすぎ」シグナルがすでに3つ点灯していたが、後の2日間でさらに売られて大きく下落した。「逆もまた真なり」とは言えないか?

 需給面では、前週までの買いのエネルギーはまだ残っていると思われる。東証が発表した11月9~13日の投資主体別株式売買状況を見ると、「需給三国志」は外国人は4週連続の3003億円の買い越しで前週の1318億円から大幅に積み増していた。前週、2万円寸前まで後押ししたのはこの勢力。個人は7週連続の3298億円の売り越しで外国人と綱引き。株価の上昇局面では「外国人順張り、個人逆張り」のパターンはよく現れる。投資信託は3週連続の1810億円の売り越しだった。

 11月13日時点の信用倍率は4.56で10月2日の5.95から大きく低下した。裁定買い残は3397億円増え、夏前の「破竹の12連騰」終了直後の6月5日以来の3兆円の大台に乗り、あの頃並みの上昇のエネルギーが補給されていた。前週のカラ売り比率は、16日は35.1%、17日は32.7%、18日は34.7%、19日は34.4%、20日は34.2%で、30%台前半まで落ち着いてきた。40%台という異常な高さだったのはもう過去の話になった。

 「政策相場」になりそうな気配、ゴールデンクロスの出現、買い越しが続く海外投資家を軸とする買いのエネルギーの健在に、過去15年間の「勤労感謝の日」が入った連休明けの日は大相撲なら優勝確実の14勝1敗というデータもあり、よほどのことがない限り、今週の2万円到達は可能性大だろう。しかし、先物・オプションの2万円に置いたポジションの解消や、それに伴う買いのエネルギーの「電池切れ」、心理的節目に到達したことによる心理的な安堵感、買われすぎシグナルが派手についているオシレーター系指標などが足を引っ張り、もし勢いにまかせて20100円まで達したとしても一時的で、再び2万円を割って調整する局面もくると思われる。ボリンジャーバンドの25日線+2σの20174円を超えるのは、かなり厳しいだろう。

 もし19日に2万円に到達していたら今週はいきなり調整もありえたが、あと41円足らずに到達できなかったので、後にずれる。その調整幅として2万円-300円の19700円を想定する。それは前週18日までは終値の頭を抑えるレジスタンスラインだったが、19日にそれを突破したことで今度は下値を支えるサポートラインに変わるとみる。移動平均線にしても「雲」にしても心理的節目にしても、それを突破すれば、敵が兄弟に変わる優しい法則がある。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは19700~20100円とみる。2万円到達はたやすくても、2万円台定着は一筋縄ではいかないだろう。

 14年前の「9.11」の時もそうだったが、「Paris 11.13」は、「安全」と「自由」というトレードオフの関係をいかに両立させればいいのかという難題を、再び世界に突きつけた。自由には当然、金融取引など経済活動の自由も含まれる。フランスの哲学者ミシェル・フーコーはかつて「社会は防衛しなければならない」と言いながら、こうも言っている。「自由主義は、安全と自由の作用を運営することによって、個々人と集団とができる限り危険にさらされないようにしなければならないのです」(『生政治の誕生』)