今週、11月第4週(23~27日)は、23日の月曜日が「勤労感謝の日」の祝日で休場するので4日間の取引。国際会議ラッシュも終わり、国内外ともとりたてて大きなイベントはないが、安倍内閣が「TPP」「一億総活躍社会」の関連政策をとりまとめるので「政策に売りなし」の週間になるかもしれない。11月下旬はアノマリーも良く、19日にあと41円まで迫っていた日経平均の2万円回復には好環境だろう。
世界の主要株式市場の休場日は、25日にインド・ムンバイ市場が「グル・ナーナクの誕生日」で休場する。ナーナクは16世紀にシーク教を開いた教祖。シーク教はイスラム教とヒンズー教の両方の影響を受けながらカースト制度を否定する一神教で、教育水準が高い上層階級の信者が多い。頭にターバンを巻くのはもともとはシーク教徒の風習だった。26日はアメリカのNY市場はじめ全ての金融マーケットが「感謝祭(サンクスギビングデー)」で休場する。NY五番街のパレードは34丁目の百貨店メーシーズが主催しメインスポンサー。なお、翌27日のNY市場は午後1時までの短縮取引になる。
国内の経済指標は、27日は月末の金曜日恒例で政府発表の国内指標が多い。いつも数値のアップダウンが激しい家計調査は麻生財務大臣が総務省に注文をつけていた。25日に出るTPP対策の政策大綱、26日に出る「一億総活躍社会」に向けた緊急対策は、農業関連や子育て関連など縁のある銘柄の株価に影響を及ぼす可能性がある。
24日は10月の全国スーパー売上高、25日は10月の企業向けサービス価格指数、9月の景気動向指数改定値、26日は10月の白物家電の国内出荷実績、27日は10月の労働力調査(有効求人倍率、失業率)、家計調査(二人以上世帯実質消費支出)、消費者物価指数(CPI/10月全国、11月東京都区部)が、それぞれ発表される。
24日に榊原経団連会長が記者会見を行う。25日に10月30日開催の日銀金融政策決定会合の議事要旨が発表される。昨年の追加緩和から1年後で、国会議員も加わって追加緩和への期待が妙に盛り上がった回。政府がTPP対策の政策大綱をとりまとめ、閣議決定する。気象庁が12月から来年2月までの冬季3ヵ月予報を発表する。激動の2015年もあと1ヵ月と少し。26日に政府が「一億総活躍社会」に向けた緊急対策をとりまとめる。
主要銘柄の決算発表は端境期。26日に日本生命など非上場の生命保険大手各社が4~9月期決算を発表する。24日はプラネット<2391>、ダイドードリンコ<2590>、ヤガミ<7488>、タカショー<7590>。25日はウチダエスコ<4699>、内田洋行<8057>。26日はラクーン<3031>、東和フードサービス<3329>、オリバー<7959>、アインHD<9627>。27日は日本駐車場開発<2353>、大和コンピューター<3816>、日本スキー場開発<6040>、菱洋エレクトロ<8068>。
新規IPOは1件。27日にネオジャパン<3921>が東証マザーズに新規上場する。横浜市が本社で、ウェブ技術をベースとしたグループウェアとその関連製品・サービスの開発、販売を手がける。公開価格は2900円。人気のIT・ネット関連なので初値翌日、翌々日持ち越しの好デビューになるか? 11月の新規IPOはこれで終了。なお、25日のトライアンフコーポレーション<3651>の上場先は「TOKYO PRO」市場で、一般の個人投資家は特別な許可でも得ない限り売買できないため、新規IPOにはカウントしないのがふつう。
海外の経済指標は、アメリカの23日の中古住宅販売、24日のGDP改定値、25日の新築住宅販売は要注意。住宅市場指数の株価への影響度は小さくない。
23日はドイツ、ユーロ圏の11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値、アメリカの10月のシカゴ連銀全米活動指数、中古住宅販売指数、アメリカのマークイット製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値、24日はドイツの11月のIFO景況感指数、アメリカの7~9月期国内総生産(GDP)改定値、9月のS&Pケース・シラー住宅価格指数、11月の消費者信頼感指数、25日はアメリカの10月の耐久財受注額、個人所得・個人消費支出、9月のFHFA住宅価格指数、10月の新築住宅販売件数、27日は中国の1~10月の工業企業利益、英国の7~9月期国内総生産(GDP)改定値が、それぞれ発表される。
23日にユーロ圏財務相会合が開かれる。24日にトルコ、25日にブラジルで政策金利が発表される。NY市場は26日は休場で、27日は午後1時までの短縮取引。感謝祭明けの「ブラックフライデー」で、アメリカの小売業は年末商戦に突入する。ブラックとは帳簿の黒字のことで文字通りの書き入れ時。30日はネット通販の「サイバーマンデー」の日。
アメリカ主要企業の決算は24日にヒューレット・パッカード、ティファニー、ダラー・ツリー、25日にディアが予定している。
「ニューエッジ(Newedge)」という証券会社がある。社名は英語だがフランスの会社で、2008年に大手金融機関のソシエテ・ジェネラルとクレディ・アグリコルの傘下の証券会社が合併して誕生した。ヘッジファンドなど機関投資家の売買注文を証券取引所に取り次いで手数料を得る「ブローカレッジ」を主要業務としている。JPX(日本取引所グループ)<8697>が発表する大阪取引所の先物・オプション各商品の「取引参加者別取引高」、通称「手口リスト」では、ニューエッジは毎日その上位に顔を出しており、1位になることもしばしば。日本では同じフランス勢のBNPパリバをリードしている。
そのニューエッジも親会社のソシエテ・ジェネラルも、テロの現場からは遠いとはいえ、主要なオフィスはエトワール凱旋門の西方に高層ビル群がそびえる副都心、ラ・デファンス地区にある。「休業したのではないか?」「仕事にならなかったのではないか?」と思うのは日本人の感覚。現地時間では日曜の夜で、外は警官や兵士ばかり徘徊してまるで戒厳令下のようだったという16日、日経平均先物でもTOPIX先物でも大量の売り注文を出して先物主導の203円の下げを演出し、翌17日は逆に大量の買い注文を出して日経平均236円高に一役買っていた。BNPパリバも同様に、元気に日本に売買注文を出していた。
おそらくそのオフィスでは「休んだらテロリストの思う壺だ」「金融マーケットはテロに屈しない」といった映画のような勇ましいセリフは、誰も言わなかっただろう。その前の週と変わりなく「いつも通りに(Comme d’habitude)」だったはず。いつも、私のやり方で。それこそ、1秒後に何が起きるかわからない金融マーケットと日々向きあうプロフェッショナルの矜持で、手口リストの数字の裏に、それが垣間見えた。フランスCAC指数も20日は4910.97で終え、テロ直前の13日終値から1週間で2.14%上昇している。
テロリストに蹂躙された「苦悩の首都」からの市場参加者でさえそうなのだから、日本など他国の市場関係者がうろたえては情けない。世界の金融マーケットもおおむね冷静な反応だった。週明けの16日こそ為替も株価もリスクオフの定石通りに反応したが、17日は一転、リスクオンして会津の「起き上がりこぼし」のように元に戻ろうとした。18日にエールフランス機が爆破予告で緊急着陸し、パリ郊外サン・ドニでテロリストと警官隊の間で壮絶な銃撃戦が起きて同時進行の後場の東京市場は下げたが、翌19日は日経平均は2万円に「大接近」。20日も為替の円高と3連休前で不利な状況をくつがえし、大引けでプラスになる大逆転を演じた。前週の東京市場はテロに屈しない強さを見せていた。