【日経平均】金融政策決定会合の結果が出てから波瀾万丈

2013年01月22日 19:50

  NY市場は休場。22日朝方の為替レートはドル円が89円台後半、ユーロ円が119円台半ばと、大台の少し手前でそれほど円高ではない。日経平均は17.36円高の10765.10円と小幅高で始まり、その後はおおむね10700円台後半の範囲で静かな値動き。現物も先物も商いが細り、日銀の金融政策決定会合の結果を待つ様子見ムードが強かった。

  そこへ、また政治家の余計なひと言。「物価目標をめぐる議論が割れている」という麻生財務大臣の発言が午前11時頃に伝わると為替は円高に振れ、日経平均は10700円を割り込んだ。「2%の物価上昇目標」を完全に織り込み済みだった市場が動揺するのは当然だったが、その騒ぎも昼休みには沈静化し、後場が始まり日経平均がプラスに戻った12時47分、日銀から結果が伝わりはじめる。

  「資産買入基金が2014年から期限を設けず毎月13兆円の資産買い入れを行う」という追加緩和の中身は長期国債2兆円、短期国債10兆円で、その他の資産は残高を維持し10兆円程度の上積み。事実上のゼロ金利政策の維持とともに全員一致の決定だったが、「2%の物価上昇目標を早期に実現」のほうは賛成7対反対2で、麻生大臣が言っていたように2人の委員が反対していた。

  その後の東京市場はまさに波瀾万丈。後場の日経平均は一時3ケタ高になり10859円まで上がったが、その38分後には10615円まで落ちる乱高下。ドル円もいったん90円の大台に乗せて折り返した。日経平均はマイナス圏で騰落を繰り返しながら徐々に落ち着きを取り戻し、大引けにかけて上げて終値は37.81円安の10709.93円だった。売買代金は2兆円を超えている。TOPIXは900台を維持。為替はドル円は89円前半、ユーロ円は119円近辺まで円高が進んでいた。

  かつてのメジャーSQ日を思い出させる目が回りそうな大変動の原因は、会合結果への市場の評価が割れて、ぶれて、方向感が見失われたため。FRBにならった「無期限追加緩和」を評価して買われる一方で「2014年からでは遅すぎる」と失望売りされるような状況だった。「当座預金付利の引き下げ、撤廃がない」「リスク資産の増枠がない」「物価上昇目標に反対者が2人出た」など、探せばマイナス要素はいろいろ出てくる。大引け後に日銀の白川総裁と麻生大臣、甘利大臣は「共同声明」を公表し、安倍首相に報告した。

  この日の値上がりセクターは上から鉱業、不動産、精密機器、証券、空運、陸運の6業種。金融緩和期待で買われた不動産株はザラ場の乱高下の影響もそれほど受けず、三井不動産<8801>が24円高、三菱地所<8802>が35円高、住友不動産<8830>が45円高と堅調だった。精密機器で非常に好調だったのが44円高のリコー<7752>で、野村HD<8604>など証券も買われていた。

  前日大健闘したソニー<6758>は売買代金1位で4日続伸。一時は1226円まで上昇したが、最後は5円高で終値1200円台乗せはこの日もお預け。東芝<6502>とオリンパス<7733>は外資系証券が投資判断を引き上げて順調で、前日に内部管理体制確認書を東証に提出して特設注意市場銘柄から解除される見通しが強まったオリンパスは2000円にタッチし123円高だった。シンガポール企業の買収戦からの撤退を決めたキリンHD<2503>は昨年来高値を更新している。

  一方、値下がり幅が大きいセクターは紙パルプ、電力、海運、自動車、鉄鋼など。自動車はホンダ<7267>が80円安と大きく下げた。

  後場の日経平均の上下幅244円の乱気流に巻き込まれたのが、売買代金が2、3、9位に入ったメガバンク株で、三井住友FG<8316>は一時45円高をつけたが終値は45円安。三菱UFJ<8306>は一時10円高をつけたが終値は1円安。終値1円安のみずほ<8411>もプラスの時間帯があった。オリエンタルランド<4661>は営業利益3割増で過去最高になったと発表しながら、結局130円安だった。

  茂木敏充経済産業大臣が太陽光発電の買取価格について、2012年度の42円を2013年度は30円台後半に引き下げる考えを示し、サニックス<4651>は値下がり率2位で48円安、高島<8007>は同12位で18円安、ウエストHD<1407>は107円安、フェローテック<6890>は30円安と、震災後にもてはやされた太陽光発電関連銘柄に大幅下落が相次いだ。ソフトバンク<9984>も7円安で終えている。値がさ株のファーストリテイリング<9983>は310円高だったが、ファナック<6954>は150円安とさえなかった。

  今日の主役は塗料業界の銘柄。日本ペイント<4612>が、筆頭株主のシンガポールの塗料大手から大規模買い付けを提案され、値上がり率8位の81円高で終値は890円と好調だった。TOB価格は900円と報じられている。連想買いは同業他社にもひろがり、関西ペイント<4613>、日本特殊塗料<4619>は昨年来高値を更新し、トウペ<4614>も買われた。塗料は地味な業界だが、日本の技術力が世界からしっかり評価されている。(編集担当:寺尾淳)