14年度の国内主要企業の臨床検査薬・機器事業規模は前年度比7.6%増の9,455億円

2015年12月26日 16:39

 矢野経済研究所では、臨床検査薬・機器事業展開企業の事業規模調査を実施した。調査期間は2015年9月~11月、調査対象は国内の主要な臨床検査薬・機器事業展開企業 40 社(日本企業および海外企業日本法人)。調査方法は同社専門研究員による直接面接取材、電話取材、ならびに文献調査を併用した。

 それによると、2014年度の国内主要企業における臨床検査薬・機器事業規模(臨床検査薬・機器事業を展開する国内主要40社の事業者売上高ベース)は前年度比7.6%増の9,455億円と推計した。事業を臨床検査薬と臨床検査機器・関連事業別に見た場合、検査薬事業は5,680億円、検査機器・関連事業は3,775億円であった。

 また、国内向けと海外向け別に見た場合、国内向け5,242億円、海外向け 4,213 億円であった。現状、海外向けウエイトが高いのは、生化学自動分析装置、血球計数装置などを展開する一部企業に限られているが、免疫検査、血液凝固検査分野等の海外展開も徐々に進展しているという。海外向け臨床検査薬・機器事業では現地企業への OEM 供給などが好調に推移し、伸長要因となっている。

 また、国内における臨床検査薬・機器事業規模は、高齢者人口の増加および、がん検診など予防医療への国の重点施策に加え、各種感染症などの流行などもあり、年率 3%前後の微増で堅調に推移してきた。しかし、2014 年度については診療報酬改定による価格下落、機器を中心に消費増税前の駆け込み需要の反動減などからやや低調に推移し、同年度の国内向け臨床検査薬・機器事業規模は、前年度比0.6%増にとどまったとしている。

 検査項目別では、心不全の診断・病態把握の NT-proBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体 N 端フラグメント)、細菌性敗血症鑑別診断の PCT(プロカルシトニン)、血栓症診断の D ダイマーなどの検査が、比較的好調に推移している。小児感染の多いアデノウイルス抗原、A 群β溶連菌なども一定の検査需要を有している。全体的には POCT(Point of Care Testing:臨床現場即時検査※)領域での機器、キットの伸長がある。

 2015年度の国内主要企業における臨床検査薬・機器事業規模(臨床検査薬・機器事業を展開する国内主要40社の事業者売上高ベース)は、国内向けが前年度比2.1%増、海外向けは同8.0%増、あわせて同 4.7%増の9,900億円と予測した。

 国内向けの事業では、今後も POCT 領域や糖尿病関連、がん検診関連などの検査が堅調に推移するという。新しいテーマでは呼吸器感染症分野におけるウイルス・細菌微生物の遺伝子検査などが注目されるという。特に複数のウイルス・細菌微生物を同時に簡便に検査するマルチプレックス型機器は認可動向や需要性が期待されるとしている。

 一般消費者向けの検査分野では異業種企業等によるヒト遺伝子検査ビジネスへの参入が相次いでいるほか、薬局店頭等での自己採血検査の拡大、医療用検査薬の一般医薬品(OTC)化等の検討も進められている。これら一般消費者向け分野は、まだ発展途上のビジネスであるものの、国民の予防医療意識の向上、臨床検査の裾野拡大などの面で臨床検査薬・機器企業に与える影響力は徐々に高まるものと同社では分析している。(編集担当:慶尾六郎)