グローバル化は、なぜ必要? グローバル戦略を進める日本企業の今

2016年01月16日 20:43

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海外市場の重要性が増すにつれ、今後はさらに、グローバル本社の役割が大きくなってくるといわれている

 愛知県に本社を置く住友理工株式会社<5191>は1月4日、名古屋・名駅エリアにグローバル本社を新設し、業務を開始するとともに開所式を催した。同社は、自動車用防振ゴム・ホース部門は国内トップシェアを誇る、高機能ゴム・樹脂製造企業だが、現在23ヶ国103拠点でも事業を展開。2013年に海外企業を買収・子会社化するなどして、積極的にグローバル化を進め、自動車用防振ゴムでは世界でもトップシェアを占める。

 2012年前後から、日本の大手企業の間ではグローバル本社設立の動きが活発になっている。

 グローバル本社とは、これまでの「海外部門」といったような付加的に海外市場をとらえた組織構造ではなく、日本以外のグローバル地域の事業すべてを統括する組織のことだ。日本では、たとえ海外部門でも、今でも旧態依然としている企業が多く、日本語で会議が行われ、社員も日本人中心、経営方針も日本を基準に置いているところが少なくない。しかし、急速にボーダーレス化が進む世界経済の中で国際競争力を維持し、拡大していくためには日本企業のグローバル化、意識改革が必須だ。

 グローバル本社を設立する目的は、大きく3つ考えられる。一つは海外拠点に対する管理と牽制機能の強化だ。計画に基づく経営推進を図り、連結での計画達成を図るためには、問題の芽は早期に摘み取り、対策を講じなければならない。そのためには、日本本社の一部門ではなく、軸足を海外拠点に向けた会社組織が必要となる。

 二つめは、めまぐるしく変化する国際市場状況に柔軟に対応する、グローバルな戦略機能だ。地域のニーズに合わせた新規市場の開拓、それに必要な供給拠点戦略の検討や配置、既存拠点の統廃合を含めた再編等、常に最前線で戦略を検討し、それを迅速に遂行していくことは、グローバル本社の大きな役割だ。
 
 そして三つめは、各拠点へのサポート業務である。そもそも、各拠点が置かれた国々によって法律は異なり、雇用条件や労働形態も異なる中、本社の一部門で法務や人事、ものづくりのサポートまで行うのは無理がある。そこで、こういったサポート機能、財務センター機能等を行うのが現地会社となるわけだが、最終的にそれらを統括・管理するのがグローバル本社の役割となるのだ。前述の住友理工のように何十か国で展開している企業にとっては、グローバル本社の設立はむしろ必然ともいえるだろう。

 日本企業のグローバル本社としては、まず名前が挙がるのは日産自動車<7201>だろう。同社は2009年4月に本社ビルを横浜市のみなとみらい地区に移転、「日産自動車グローバル本社」とした。また、2012年には同じくみなとみらい地区の「みなとみらいグランドセントラルタワー」には、石油や天然ガスなどのエネルギープラント建設大手の千代田化工建設<6366>が本社機能を移転、「千代田化工建設グローバル本社」として稼働している。

 海外市場の重要性が増すにつれ、今後はさらに、グローバル本社の役割が大きくなってくるといわれている。それに伴い、日本本社の守備範囲は徐々に縮小し、日本国内の市場に特化していくことが予想される。しかし、それは決して経営規模の縮小ではなく、むしろ役割分担が確立することによって、内に外に、より強固で柔軟な企業グループが形成されていくのだ。(編集担当:藤原伊織)