慶応義塾大学、京都工芸繊維大学などの共同研究グループは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を分解する細菌を発見し、その分解メカニズムを解明した。今後研究が進み、使用済みPET製品のリサイクル技術の開発に貢献することが期待されている。
PETは、石油を原料に製造され、ペットボトルや衣服などの素材として世界中で活用されている。その一部はリサイクルされているが、対象はペットボトルに使われたものだけで、実際にリサイクルされるのはPET生産量全体の4.1%にとどまっている。多くは自然界に廃棄されてきたものの、PETは生物分解を受けないと考えられてきた。
研究グループは、 PETを栄養源とする微生物を見つけることができれば、その生物機能を利用することでリサイクルを進められると考えた。まず、自然界から様々な環境サンプルを採取し、PETフィルムを主な炭素源とする培地で培養した。数週間後、PETくずを含む堆積物を投入した試験管において、PETフィルムに多種多様な微生物が集まり、分解している様子を発見。そして、この微生物群から強力なPET分解細菌を分離することに成功した。グループはこの菌が大阪府堺市で採取した環境サンプルに由来することから 「イデオネラ サカエンシス(Ideonella sakaiensis 201-F6株)」と命名した。PETを分解するばかりか、PET を栄養源として増殖することも突き止めたという。
さらに、分解にはこの菌の持つ2種の酵素が大きな役割を持ち、PETを効率よく単量体であるテレフタル酸とエチレングリコールに分解することを明らかにした。生成されたテレフタル酸とエチレングリコールは、菌により更に分解されて最終的に炭酸ガスと水になる。
研究グループでは「これまでPETは自然界で、分解されず蓄積するのみと考えられてきたが、今回の研究により、PET を物質循環に組み込む生物的なルートが存在すること が明らかとなった」と話している。(編集担当:城西泰)