わずかな海水からのDNAで魚群探査、マアジで証明

2016年03月07日 08:36

 バケツ1杯ほどの海水から魚群の規模を把握できることを神戸大学などの研究グループが明らかにした。海水中に放出された魚類のDNA量を観測することで、周辺に生息する魚群の規模を把握する。漁業などへの応用が期待される。世界で初めての報告といい、研究成果は3月2日に米国オンライン科学誌「PLOS ONE」に掲載された。

 従来は、海の生物種の分布を把握するために網などによる捕獲調査や魚群探知機による計測調査が主流だった。しかし、これらの調査では、人手や時間、多大な費用がかかるほか、専門知識も必要とされる。その一方で学術的には、水中に放出されたDNAから調査したい魚種が生息するかどうかを判断する方法はすでに報告されていた。

 研究グループでは、魚群から放出されたDNA(環境DNA)の量を測定することで、海洋中での魚の居場所やその魚群規模を明らかにできるかを検証した。2014年に舞鶴湾の47カ所で表層水と底層水をそれぞれ1リットルずつ汲み取り、そこに含まれるマアジの環境DNA量をリアルタイムPCR法(DNA増幅法)によって測定した。

 その結果を従来法の計量魚群探知機により測定した採水地点周辺のマアジの生物量と比較したところ、環境DNA濃度は採水地点から数10~150メートル以内のマアジの生物量を最もよく反映していることが明らかになった。

 この手法は、作業が容易なために専門知識がなくても調査を行うことができ、短時間で広範囲の分析が可能となる。研究グループは「長期的な調査にも向いており、海洋水産資源の量や分布、時間的変動の調査効率を飛躍的に向上させることが期待される」とコメントしている。(編集担当:城西泰)