訪問入浴サービス、体温37.5度以上で事故確率16倍

2016年02月27日 15:41

 入浴前の下の血圧が100以上だと入浴事故の危険は14倍――。東京都市大学の早坂信哉教授らの研究グループが訪問入浴事業所として登録されている全2,330カ所の事業所に対して訪問入浴に関連する事故・体調不良(以下、入浴事故)の発生状況を調査したところ、596例の入浴事故(平均82.3歳)があったことがわかり、これを解析した結果、これまで目安がなかった血圧や体温の値について危険を見極める参考になる数値を割り出した。研究グループでは「科学的根拠に基づく高齢者への安全な入浴の実施が期待される」としている。

 入浴事故として報告された主な症状(重複あり)は、発熱100例、呼吸困難・喀痰喀出困難93 例、意識障害64 例、嘔吐・吐き気63例、外傷63例、血圧上昇46例、血圧低下46例、チアノーゼ・顔色不良36例などだった。

 研究によると、血圧について、「入浴前の収縮期血圧(いわゆる『上』)が160mmHg以上だと入浴事故の危険は3.63倍」「入浴前の拡張期血圧(下)が100mmHg以上だと14.7倍」だった。また、体温との関連も調べ、「入浴前に体温37.5度以上だと入浴事故の危険は16.47倍」という結果が出た。

 これまでは、血圧値や体温値等の科学的根拠に基づく入浴可否判断基準(ガイドラインやマニュアル)がなかったため、訪問入浴等の介護保険が適用される入浴サービスでは介護者が経験によって入浴の可否を判断していた。研究グループは「判断の参考となる血圧値や体温値を、統計的な調査によって初めて数値として示すことができた。訪問入浴のみならず、高齢者入所施設や通所介護、通所リハビリ、家庭での入浴にも活用できる結果と考える」とコメントしている。

 高齢者ではない世代にも大いに参考になる研究成果だ。(編集担当:城西泰)