耳の中の形状で生体認証、作業現場などでの応用に期待

2016年03月16日 14:28

 NECは、長岡技術科学大学の協力を得て、人間の耳穴の形状によって決まる音の反響を用いた新たなバイオメトリクス(生体情報)個人認証技術を開発した。マイク一体型イヤホンを耳に装着し、耳の穴で反響したイヤホンの音をマイクが収集することで、個人特有の耳の形状によって決まる音響特性を1秒程度で瞬時に測定するという。

 音響信号は外耳道から鼓膜に達し、さらに中耳、内耳へと進む。同社では、この流れの中で特に外耳道を通って鼓膜で反射して返ってくる信号成分と、鼓膜を通過してさらに奥で反射して返ってくる信号成分が重要であることを実験で明らかにし、この2種類の信号成分に対応する周波数帯を含む少数の特徴量を抽出することで個人を認証することに成功した。少ない計算量での動作が可能になるとともに、外的環境の影響がないので安定して高精度な認証(99%以上)という特徴を持つ。

 具体的には、イヤホンのスピーカから数100ミリ秒の音響信号を出力し、耳の中を伝搬した音響信号をマイクで受信、複数回の受信信号の波形を加算し平均を取る同期加算法を用いて、耳の中で音がどのように響くかを算出する。これらを瞬時かつ安定的に実行する。

 生体認証には顔や指紋を使うものなどがあるが、新技術は認証用機器に体の一部をかざすなどの動作がいらないため、移動中や作業を行いながらでも、マイク一体型イヤホンを装着するだけで常時認証が可能となる。同社では、重要施設の保守・管理や警備など安全・安心に関わる業務でのなりすまし防止や、無線通信・通話における内容の秘密保持、医療現場での移動中・作業中の認証などに役立てるため、2018年度中の実用化を目指している。(編集担当:城西泰)