結婚に関する日本ならではの「古き良き」慣例を簡素化する傾向はここ数年加速化している。
矢野経済研究所が発表したブライダル市場(対象:挙式・披露宴・披露パーティ、新婚家具、新婚旅行、ブライダルジュエリー、結納式・結納品、結婚情報サービスの6分野)に関する調査によると、2009年以降、同市場は縮小傾向にあり、2011年は前年比96.8%の2兆6,630億円、2012年は前年比98.3%の2兆6,170億円を見込むという。
伸び悩みの背景としては、ブライダル関連市場の中で5割以上の構成比を占める挙式・披露宴・披露パーティ市場の落ち込みが主に挙げられ、2011年の売上高は前年比95.6%の1兆4,500億円、2012年は同98.6%で1兆4,300億円の縮小が予測されている。これまで成長戦略の主軸として、各事業者は積極的に挙式披露宴施設の新規出店を行ってきたが、婚姻件数の横ばいや、いわゆる挙式や披露宴を行わない「なし婚」層の増加などの影響で施設自体はすでに供給過多の状態となっている。
また、送客エージェントの影響も無視できないという。この送客エージェントはインターネットや相談デスクを介してホテルやレストランなどの婚礼施設で予約の入りにくい日取りや直近で空いている会場を低価格で紹介・販売する仲介業(一部プロデュース業を含む)。こうした仲介サービスにより施設運営者側が、結果として低価格販売を活発化させることで消費者の選択肢を広げるという側面がある一方、消費者の低価格志向も影響し、1組あたりの価格低下の一因となっている。
一方で円高による新婚旅行市場の拡大や震災以降会員が増加している結婚情報サービス市場の拡大はプラス要因であるが、いずれも市場全体を押し上げるほどではないのが現状だという。
一昔前、結婚式は親族や友人、同僚を呼んで、一世一代のお披露目イベントとして華々しく行うことが当たり前だったが、今や入籍のみ、というカップルも少なくはなく、2組に1組のカップルが結婚式をしないと言われている。「不景気で先が不安、お金はおいておきたい」という経済不安の影響も大きいが、離婚率が多くなってきたことから「再婚だから」、または「できちゃった結婚」など現代社会ならではの理由も要因となっているのかもしれない。また、仕事とプライベートをはっきりと分けたい若者にとっては、義理だけで会社関係の人を呼ぶと言うのにも抵抗が少なからずあるという見方もできる。しかし希薄になっていく人間関係が問題となっている今、「古き良き」風習をもう一度見直してみるのも良いのではないだろうか。(編集担当:宮園奈美)