避難生活での口腔ケア 子どもと高齢者に危惧される事態

2016年05月01日 11:56

画・避難生活て_の口腔ケア 子と_もと高齢者に危惧される事態

避難生活では、水の確保が難しく、歯や入れ歯のお手入れが疎かになりやすい。支援物資のお菓子は子どもに喜ばれるが、歯磨きを十分に行わないと虫歯のリスクが高まる。また、高齢者は口腔ケアの不足に加えて避難生活の疲れで体力が落ち、誤嚥性肺炎が起こる恐れも。

 避難生活では、水の確保が難しく、歯や入れ歯のお手入れが疎かになりやすい。支援物資のお菓子は子どもに喜ばれるが、歯磨きを十分に行わないと虫歯のリスクが高まる。また、高齢者は口腔ケアの不足に加えて避難生活の疲れで体力が落ち、誤嚥性肺炎が起こる恐れがあるため、注意が必要だ。

 誤嚥性肺炎とは、食べ物を飲み込むときに、誤って食べ物が気管に入ることが一因となって引き起される。本来、空気が通るべき気管に食べ物や唾液と一緒に細菌が入ると、肺が炎症を起こすのだ。食べ物や飲み物を飲み込む動作が上手くできない「嚥下障害」がある人が、誤嚥性肺炎にかかりやすい。

 厚生労働省の発表によると、肺炎による死亡の割合は、70歳以上が9.2%、90歳以上が15.9%と非常に高い。その多くが誤嚥性肺炎ともいわれ、高齢者であれば誰にでも起こり得る病気といえる。特に、脳梗塞、神経・筋疾患、口や喉の手術の経験があったり、放射線治療により口腔環境が変わった人、寝たきり、睡眠薬を常用している人は、誤嚥性肺炎のリスクが高いとされる。

 誤嚥は夜間に起こりやすく、誤嚥を起こしても“むせる”などの自覚症状がない場合もあり、知らず知らずのうちに誤嚥を繰り返したり、胃の内容物が逆流して気管に入った場合も、誤嚥性肺炎につながることがある。誤嚥を防ぐためにも、食事中の誤嚥に気をつけ、日頃の口腔ケアを欠かさず行いたい。

 避難所によっては、飲み水さえ足りておらず、環境が整っていないことがあるため、極力水を使わない口腔洗浄法が役立つ。日本口腔ケア学会によると、水が不足しているときは多くの水を含んでうがいをせず、少量の水で複数回行ったほうが効果的という。歯ブラシがない場合は、タオルやティッシュペーパーなどで歯の表面についた歯垢を拭い、入れ歯も同様に拭いておくといい。

 虫歯へのリスクは、子どもに限らず大人にもいえるが、お菓子などをだらだら食べると高まるため、時間を決めて食べるようにしたい。避難生活中は他にも心配事が尽きないため、歯みがきまで気が回らないかもしれないが、家族と自身の健康と命を守るために必要な習慣であることを覚えておきたい。(編集担当:久保田雄城)