1月31日は、11000円台に乗せて夜を明かしたので利益確定売りが入りやすい一方で、月末恒例の「ドレッシング(お化粧)買い」が入る日でもあり、加えて400社近くの4~12月期決算が集中し、ザラ場中の発表も波乱要因になる可能性があった。
FOMCではQE3継続を決めて「出口戦略」がらみの雑音を封じたが、アメリカの10~12月のGDP成長率は予想外のマイナス0.1%でNYダウは44ドル安。FRBは遠回しな表現でハリケーンと財政の崖問題のせいで一時的に景気が足踏みと分析。朝方の為替レートはドル円が91円近辺、ユーロ円が123円台後半で、ユーロ高が進行した。
日経平均は56.45円安の11057.50円で始まったが、前場はマイナスとプラスの間で浮いたり沈んだりし、後場はずっとマイナス圏だった。それでも11000円の大台は割り込まず底堅い。TOPIXはプラスの時間帯が多く市場全体は買いが優勢な状況が続いた。日経平均を押し下げたのは波状的に入る指数先物中心の利益確定売りで、ファナック<6954>、ファーストリテイリング<9983>、信越化学<4063>、京セラ<6971>など値がさ株が狙い撃ちされるように売られた。ところが、午後2時台に入って日経平均がマイナス幅を徐々に圧縮し、大引けの約15分前にはプラス圏に浮上。結局、終値は24.71円高の11138.66円になった。2時台に12月の住宅着工戸数10%増という好指標が発表されたが為替レートに目立った変動はなく、ファーストリテイリングが40円安から240円高まで駆け上がり、花王<4452>が20円以上急騰し、海運株や鉄鋼株が切り返して売買を伴って上昇したのが原動力だった。TOPIXは+5.58の940.25で、日経平均ともども昨年来高値を更新。売買代金は2兆円を超えた。これで3ヵ月連続で月の取引最終日にその月の終値の最高値をマークし、ドレッシング買いおそるべし。
業種別では海運、鉄鋼、紙パルプ、証券、銀行、情報・通信の上昇が目立ち、その他製品、建設、保険、食品などが低調だった。トップの海運株は1億株以上取引されて売買高5位、売買代金7位に入った商船三井<9104>と売買高7位の川崎汽船<9107>の活躍がめざましかった。情報・通信はソフトバンク<9984>、ドコモ<9437>、KDDI<9433>のモバイル組だけでなく、ふだんは地味なNTT<9432>も買われた。
TOPIXが値を保ったのは時価総額が巨額なメガバンク株の上昇のおかげ。5円高のみずほ<8411>の売買高は3億株をオーバーし1位、18円高の三菱UFJ<8306>は1億7000万株以上。33%増益の決算を発表して180円高の三井住友FG<8316>は売買代金2位に入り一時、時価総額が5兆円を超えた。
オリエンタルランド<4661>は130円高と続伸し昨年来高値更新。新アトラクションが好調で、4~12月期の純利益は73%増で過去最高に。TDL開業30周年、シー開業10周年の今年は上々の滑り出し。自社株買いを発表したユニチャーム<8113>は85円高だった。
自動車株は読売新聞が129万台リコールと報道したトヨタ<7203>は値動きなしで、マツダ<7261>が2円安とさえなかったが、来期の予想を上方修正した日野自動車<7205>が16円高で16年ぶりの高値をつけた。日産<7201>は4円高。決算発表前だったホンダ<7267>は30円高で、決算内容は純利益が前期比2.1倍と好調。一方、電機のソニー<6758>、パナソニック<6752>、シャープ<6753>の三兄弟は続落。21円安のソニーの売買代金は4位に落ちた。パナソニックとシャープは決算発表を翌日に控え、鬼が出るか蛇が出るかわからず怖くて買えない状況だったのか。
この日、決算発表で売り浴びせられたのが任天堂<7974>で、480円の大幅安で値下がり率7位。「Wii U」の販売不振で当初の黒字見通しが一転、2期連続営業赤字に。業績は前期からほとんど改善せず、「来期は1000億円の黒字にする」というコメントも投資家は疑問視。部品を供給するミツミ<6767>もとばっちりを受けた。決算内容が市場予測を下回ったキヤノン<7751>も後場に入って下落。一方、経常利益33%減の日立建機<6305>はコマツ<6301>と違って通期見通しを下方修正しなかったのが好感され69円高と続伸した。
1月の取引が終了し、日経平均は大発会から7.14%上昇した。信用取引の制度改正もあって個人投資家が戻ったおかげで売買高が30億株を下回る日は1日もなく、売買手数料収入増という形で証券各社の業績も株価も押し上げた。31日は野村HD<8604>は11円高で売買高も売買代金も3位で、大和証券G<8601>は24円高で昨年来高値を更新した。
今日の主役は鉄鋼株。売買高ランキングの6位に新日鉄住金<5401>、10位に神戸製鋼<5406>が入り、12円高の新日鉄住金と90円高のJFE<5411>が昨年来高値を更新した。今年は輸出が円安の追い風を受け、アメリカに続いて大市場の中国も景気回復が見込める上に、ライバルの韓国のポスコがウォン高で苦しんでいるので鉄鋼業界にはチャンス到来。「産業のコメ」と呼ばれたのは遠い昔だが、その跡継ぎの半導体業界がほとんど壊滅状態だけに、先代が元気なのは頼もしい。(編集担当:寺尾淳)