ガソリンスタンドが消防法で定められた、老朽化した地下タンクの使用猶予期限がこの1月末で終了した。40年を越えた地下タンクは、そのままではこの日以降は使えないことになる。
ピーク時の90年代半ばには全国で6万カ所もあったガソリンスタンドは、その後減少の一途を辿り、現在3万5000カ所と言われている。しかも、このところ毎年2000カ所のペースで急減しているのだ。その原因はクルマの保有台数減少、燃費向上に加え、クルマの利用を減らしているユーザーによるガソリン消費量の減少。それに加え過当競争による収益の圧迫も大きな原因だ。
その上で国から補助金が支給されるとはいえ、地下タンクの内壁強化、もしくはタンクの交換は回収出来る見込みの薄いコストとして大きな負担になる。過疎地では、地元のガソリンスタンドが閉店しまうことで、燃料の補給に支障が出る事態も懸念されるところも出てきた。
その一方で、経済産業省ではEV用の充電スタンドの設置目標を2013年度に5000台(自宅用を除く)、2020年までに急速充電器だけで5000台まで増やすことを掲げている。
ガソリンスタンドとEV用の充電スタンドではその性格が異なるから単純に拠点数で比べることができない。ガソリンや軽油などの燃料の給油は5分もあれば作業は完了するが、EVの急速充電は現時点で30分ほど。航続距離を伸ばすために電池の搭載量を増やせば、さらに充電時間は増えることになる。より高性能な電池などの開発も進められているが、実際にEVに搭載されて普及するのはまだまだ当分先のことだ。
自宅やマンションの駐車スペースで深夜電力を使い充電するなら、一定数までは問題は少なかろう。それも急速に普及すれば、揚水発電などで余剰電力を蓄えてきた従来の電力供給バランスに歪みが起こる。ましてや年に2回の帰省時期には高速道路などのEV充電スタンドは相当な数が無ければEVは使い物にならず、ガソリンと比べ約6倍の補給時間を要することを考えればサービスエリアにはガソリンスタンドの給油ノズルの5倍前後の充電スタンドが必要だ。つまり全国に5000台の急速充電器では全く足りない。しかも、それらが一気に急速充電し続ける状況となったら、周辺の電力供給も見直さなければならなくなる。
さらに就業人口減少の問題もある。ガソリンスタンドも拠点数の減少に加えてセルフ式のガソリンスタンドが増えていることも理由だが、EV充電スタンドも基本的にはセルフサービスだから、そこに雇用は発生しにくい。そうなるとEVを増やしても儲かるのはEVメーカーと電力会社のみ、ということになり、国内経済の回復に貢献するかは疑問だ。
クルマ単体ではEVの環境性能、エネルギー効率の高さは素晴らしいが、普及には様々な大きいハードルが残されている。それは燃料電池車ともなればさらに別の課題が山積みだ。つまり、ガソリンエンジン車からの切り替えは、技術革新だけでなく経済の構造改革を伴う作業なのである。(編集担当:高根英幸)