30日は月末なので午前8時50分は国内の経済指標ラッシュだった。10月の完全失業率は4.2%で変わらず、有効求人倍率は0.80倍で0.01ポイント低下。家計調査の実質消費支出は前年同月比0.1%低下。10月の全国消費者物価指数(コアCPI)は前年同月と変わらずの99.8で、これらはほぼ市場予測通り。10月の鉱工業生産指数速報値は、市場予測はマイナスだったがスマホ用部品増産が寄与して4ヵ月ぶり上昇の88.1(1.8%増)になった。午後2時に発表された10月の新設住宅着工戸数も前年同月比25.2%増で10%増前後が多かった市場予測を上回り、ポジティブサプライズが二つあった。
前夜、注目の「ニコニコ動画」の党首討論は「野田首相対安倍総裁」の直接対決は見られず特段のサプライズもなく、前日のNYダウは36ドル高で1万3000ドル台回復。為替は前日水準とほぼ変わりなく、ドレッシング買いの月末でもあり利益確定売りの金曜日でもありで、上げ、下げ、横ばいの要素全て入り乱れての東京市場スタートだった。
日経平均は45.89円高の9446.77円と高く始まったが、直後から利益確定売りに押されて上げ幅を急速に圧縮しマイナス圏に沈む。前日終値の9400円をはさんで浮いたり沈んだりしたが、その後は10時30分頃から大きく上昇して9450円、さらに9500円にあと7円少しと迫る勢いを見せた。ドル円82円台後半、ユーロ円107円台に乗せた円安進行を好感して先物買いが入ったが、ドレッシング買いとみられる作為的な気配もあった。午後の日本記者クラブでの党首討論は安倍総裁の発言に新味がなくて市場はほとんど反応せず。後場の大引け間際は「やっぱり金曜日」で利益確定売りが入り、終値は45.13円高の9446.01円だった。続伸して4月27日以来約7ヵ月ぶりの高値にはなったが、始値をわずかに下回る陰線(ローソク足は十字)で、9500円台に届きそうで何度もはね返されて天井がつかえた感があった。売買代金は1兆4245億円と商いは活発だったが値下がり銘柄のほうが多かった。
業種別では98円高のニコン<7731>、34円高のキヤノン<7751>など精密、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>など海運、日立<6501>など電機といった業種の上昇が目立った。自動車もトヨタ<7203>、ホンダ<7267>が続伸している。銀行株は三井住友<8316>が46円の大幅高で、みずほ<8411>、三菱UFJ<8306>も上げた。京セラ<6971>は前日の2.29%高と好調。ファーストリテイリング<9983>は11連騰。DENA<2432>は156円高で年初来高値を更新している。下落は国際帝石<1605>、石油資源開発<1662>など鉱業、ソフトバンク<9984>、NTT<9432>、NTTドコモ<9437>など情報・通信、新日鉄住金<5401>など鉄鋼や陸運で、前日は値上がり率トップだった中山製鋼所<5408>は急落して値下がり率トップ。ファナック<6954>、ソニー<6758>、東芝<6502>も下げている。下げた銘柄に輸出関連株もディフェンシブ系も同居しており、円安好感先物買い勢力、利益確定売り勢力、ドレッシング買い勢力三つどもえの混戦の跡がうかがえる。
前日の大引け後、三菱重工<7011>と日立<6501>が電力部門を統合するという第一報が流れた。昨年8月4日に報じられた経営統合話がウヤムヤになっていた両社だが、今度は帝国ホテルで両社長が出席しての公式発表。内容は三菱重工が65%、日立が35%を出資して2014年1月に新会社を設立し火力発電部門を統合するというもの。原子力発電は対象外で、WH-加圧水型(三菱重工)、GE-沸騰水型(日立)と提携先も技術も異なるが、記者会見では「提携も検討」という発言があった。この日は両銘柄も売買が活発化し、三菱重工は終値11円高で売買高6位、売買代金10位。日立は終値19円高で売買高、売買代金とも5位だった。